【新車のツボ43】日産フェアレディZロードスター 試乗レポート (2ページ目)

  • 佐野弘宗+Sano Hiromune+●取材・文・写真 text&photo by

 その走りはハッキリいって、ポルシェやロータスのような極上バランスと接地感の境地には達していないが、スポーツカーは好き者が乗って悶絶するための快楽機械なわけで「これじゃないと満たされない」というマニアがいても不思議はない。

 今のフェアレディには、屋根つきのクーペとロードスターの2種類がある。純粋な性能でいえば、より軽量で剛性も高いクーペのほうが格上だ。しかし、普通の人間が一般道で楽しむなら、少し落ちるボディ剛性のおかげで乗り味にわずかだが落ち着きのあるロードスターのほうが乗りやすい......からクルマは面白い。ご想像のとおり、屋根を開ければ低めのスピードで気分も高まるし......。

 フェアレディのオープン仕様は"ロードスター"を名乗る。オープンカーにも厳密にはいくつかの種類があって、ロードスターとは「簡便な幌を持つ2座席スポーツカー」を意味する。ロードスターはあくまでオープン状態が基本形なので、雨でもないのにトップを閉めて走るのは本来は無粋な行為。最近は「屋根を閉めれば完全にクーペになって一粒で二度おいしい」と電動格納ハードトップを選ぶ本末転倒(?)のロードスターもあるが、簡素な布製トップを頑固に守るフェアレディZロードスターは、伝統に忠実なスポーツカーである。そこもマニアにはツボである。

 フェアレディは日本最長、世界でも屈指の長い歴史を持つスポーツカーでもある。フェアレディという名が世に出たのは今から50年以上前の1960年、その前身の"ダットサン・スポーツ"になると、じつに60年前にまでさかのぼる。ダットサンスポーツや初代フェアレディまでは基本的に2座席オープンだったから、歴史的にいえばこのフェアレディZロードスターのほうが正統ともいえる。

 まあ、「クルマづくりなんて時代によってブレるもの。そんな歴史をいちいち追ったところで、ただの屁理屈にすぎない」といわれれば、まったくそのとおり(笑)。でも、そういう(興味のない人にはくだらない)ウンチク話もまた、好き者にはこのうえない酒の肴であり、非実用的なクルマに大金を払う自分を正当化するツボであり、スポーツカーにとって速さやサーキット周回タイムより重要な性能のひとつなんである。

【スペック】
日産フェアレディZロードスター・バージョンST
全長×全幅×全高:4260×1845×1325mm
ホイールベース:2550mm
車両重量:1580kg
エンジン:V型6気筒DOHC・3696cc
最高出力:336ps/7000rpm
最大トルク:365Nm/5200rpm
変速機:6AT
JC08モード燃費:9.1km/L
乗車定員:2名
車両本体価格:512.4万円

プロフィール

  • 佐野弘宗

    佐野弘宗 (さの・ひろむね)

    1968年生まれ。新潟県出身。自動車評論家。上智大学を卒業後、㈱ネコ・パブリッシングに入社。『Car MAGAZINE』編集部を経て、フリーに。現在、『Car MAGAZINE』『モーターファン別冊』『ENGINE』『週刊プレイボーイ』『web CG』など、専門誌・一般紙・WEBを問わず幅広く活躍中。http://monkey-pro.com/

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