日本男子マラソンが「勝負レース」で勝てないのはなぜか ペースメーカーなしのレースを増やすことが必要だ (3ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by  KIshimoto Tsutomu

 今、ペースメーカーを設定するレースがほとんどなのは、選手たちが記録を求め、主催者側も記録が出ることで大会を盛り上げたいという思いがあるからだろう。また、国内レースでも海外の招待選手が強力で、勝つというより日本人1位を求める傾向が強いことも日本人選手が勝つことを目指さなくなった理由としてある。アジア大会を走った中国の選手など、五輪や世界選手権出場の経験のある選手もいるが、それ以外は中国開催のエリートレース出場だけで、当然ペースメーカー不在だと考えられる。そんな環境で勝負感を養っていたのだろう。

 世界記録が2時間0分35秒にまで伸びている今、海外勢と日本勢の力の差が大きいのは現実だ。

 その差が小さくなる夏場のマラソンで日本勢が勝負するためには、それぞれの日本人選手がタイムよりも「自分が勝つため」の戦略を追い求めていく必要があるだろう。30km以降をいかに粘るかだけではなく、自分が勝つための戦略を自由に発想できるようにしなくていけない。

 そういった考え方を再び選手たちに芽生えさせるためには、国内でもペースメーカーのいない、スタートからゴールまですべてが真剣勝負のレースを作ることも必要だろう。

「ペースメーカーが30kmまで引っ張ってくれるのがマラソン」という選手たちの考え方を覆さない限り、「4年に一度の真剣勝負」と銘打ってMGCを開催することも、絵に描いた餅になりかねない。

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