東大医学部卒の三段跳インカレ女王・内山咲良が引退を決めた理由「研修医と陸上の両立は迷いもあったけど、すごく尊い時間でした」 (4ページ目)

  • 一ノ瀬 伸●取材・文 text by Ichinose Shin

【陸上生活はすごく尊い時間だった】

ーー引退から数ヶ月が経ちました。その間に心境の変化はありましたか?

 気持ちの面でだいぶ回復しました。引退を決めた頃は放射線科を回っていて、病院の地下の部屋で黙々と画像と向き合う日々だったので、それがかえってありがたかったです。症例発表も重なってすごく忙しくなったのもあって。そうやって医学のほうに集中するなかで、だんだんと心が回復できました。

ーー今振り返って、陸上と勉強、また陸上と仕事を両立してやっていた自分になんと声をかけたいですか?

 うーん、頑張っててえらいよって、ちょっとねぎらってやりたい感じはありますかね(笑)。とくに最後のほうは体が気持ちに追いついていない感じがあってちょっと追い詰められていたところがあったので、陸上をやりながら仕事をしているだけでえらいよって、言ってあげたいかなと思いますね。思い返すと、すごく尊い時間だったなと。

現在は静岡で研修医として働いている 写真/スポルティーバ現在は静岡で研修医として働いている 写真/スポルティーバこの記事に関連する写真を見るーー今も何か運動は続けているんですか?

 引退してしばらくはトレーニングも全然していなかったんですけど、気持ち的にも上向いてくるようになって、少しずつ再開しています。ジムへ行ったり、長い距離を歩いたり、あと最近は登山が楽しいなと思っています。

 静岡の近場の低山を歩いたり、この間は家族で富士宮の5合目から富士山に登りました。私はその前哨戦として別の日にひとりで0合目から5合目を歩きました。目標がないと頑張れないタイプの人間なので、頂上がある山はいいですね(笑)。最近、ちょっとハマっています。

今夏は家族で富士山に登った 写真/本人提供今夏は家族で富士山に登った 写真/本人提供この記事に関連する写真を見る* * *

後編では、医学に専念する現在の日々と、志す女性アスリート支援などについて聞く。


後編<東大医学部卒・元インカレ女王の内山咲良が目指す女性アスリート支援「月経、栄養、メンタルケアで幸せな競技生活を手助けしたい」>を読む

東京大学医学部時代のインタビュー記事>>


【プロフィール】
内山咲良 うちやま・さくら 
1997年、神奈川県生まれ。東京大学医学部医学科卒業。筑波大附属中・同高を経て、2016年に東京大理科3類に現役合格。陸上競技は中学時代からスタートし、高校3年時には走幅跳で全国高校総体(インターハイ)出場。大学入学後に三段跳を始め、2021年の日本学生陸上競技対校選手権(日本インカレ)女子三段跳で自己新記録13m02を出して優勝。大学卒業後、2022年から静岡県内の病院に研修医として勤務。同年6月の日本選手権で4位入賞。2023年5月に引退を発表した。最近の趣味は登山。

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