36歳のマラソン佐藤悠基は「ベテラン」という言葉に違和感 「本気で世界を目指している選手にとって年齢は関係ない」 (3ページ目)

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • photo by 築田純/アフロスポーツ

【世界で戦える選手に】

 多くのアスリートが五輪を人生をかけた最高の舞台と捉えているが、佐藤の五輪に対する姿勢は、どのように培われていったのだろうか。

「前に欧州のダイヤモンドリーグに出る機会があったんです。五輪は枠が決まっているので、選ばれた選手しか出場できないんですけど、ダイヤモンドは誰でも参加できますし、賞金がかかっているのでアフリカ勢だけではなく、世界から本当に強い選手が集まってくるんです。

 モナコでレースがあった時、直前のベルギーの大会で5000m13分13秒60(2013年7月13日)を出したので、そこそこ勝負できると思っていました。でも、最初の200mで離されて、違うレースになってしまった。自分のレベルを思い知らされて、そこから五輪や世陸だけではなく、強い選手が集う世界で勝負して結果を出したい。世界で勝てる強い選手になりたい。そう思ったんです」

 どこか達観したような佐藤の思考には、世界との勝負に勝つという揺るぎない覚悟がある。舞台がどこであれ、強くて速い理想の自分を細部にまでこだわり、追求しているところは「マラソンの求道者」のようにも見える。

「来年引退するということであればMGCに全てかけていきますけど、今のところそういう予定はないですからね。ただ、世界で勝負するためには、MGCでもしっかりと力を見せるというところにこだわり、集中してトレーニングをやっていかないといけないと思っています」

 MGCが終わっても佐藤は強くなるために歩みを止めないだろう。だが、その先、どこに向かうつもりなのだろうか。

「まだまだマラソンで世界と勝負したいという気持ちがあるので、たとえばワールドマラソンメジャーズの大会で優勝したいですね。陸上は、そういう順位を争うところとタイムを追うところの二面性を持っています。周りの相手を意識しながら走るレースで戦いつつ、自分の限界にチャレンジして自分史上最速を常に目指していきたい。時間がかかったとしても、最終的に自分の目指した目標にたどり着ければ、それは自分のなかでの勝ちかなと思っています」
 

プロフィール

  • 佐藤 俊

    佐藤 俊 (さとう・しゅん)

    1963年北海道生まれ。青山学院大学経営学部卒業後、出版社を経て1993年にフリーランスに転向。現在は陸上(駅伝)、サッカー、卓球などさまざまなスポーツや、伝統芸能など幅広い分野を取材し、雑誌、WEB、新聞などに寄稿している。「宮本恒靖 学ぶ人」(文藝春秋)、「箱根0区を駆ける者たち」(幻冬舎)、「箱根奪取」(集英社)など著書多数。

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