出雲駅伝で國學院大と中央大が作った「勝負ポイント」。エースと1年生の起用法でライバルを上回った (2ページ目)

  • 酒井政人●文 text by Sakai Masato
  • photo by SportsPressJP/アフロ、Kyodo News

 中西は前回も4区を走って区間2位。5000mの自己ベストはチームトップの13分38秒45で向かい風にも強い選手だ。前田監督は「3区終了時までに30秒差以内なら(4区で)逆転できる」と読んでいた。3区を終えた時点でトップ駒大と52秒差の6位。そこから中西は、駒大の背中には届かなかったものの、32秒前にいた青学大も抜き去って2位まで急上昇した。

 國學院大は5区で中大に逆転を許すも、最終6区で伊地知賢造(3年)が再逆転。3年ぶりの優勝は逃したが、当初の目標である「3位以内」をクリアした。

 確実にレースを進めることを考えれば、中西と1区・青木瑠郁(1年)の区間を入れ替える戦略もあったはずだ。それでも、攻めのレースを決断した前田監督。青木も区間7位と好走したことで、全日本大学駅伝、箱根駅伝に向けての期待がさらに高まった。

 3位の中大は、実に9年ぶりの出場となった。就任7年目の藤原正和駅伝監督は「今年は箱根予選会がないので、2週間ぐらい強化をうしろにズラしました。出雲に100%合うようなことはまずないと思っています」と話していたものの、選手たちは直前のレースで好タイムを連発していた。

 9月中旬に行なわれた日本インカレ5000mで吉居駿恭(1年)が4位、溜池一太(1年)が9位に入ると、1500mでは千守倫央(4年)が2位に食い込んだ。夏合宿の疲労が残るなかで出場した10月1日の日本グランプリシリーズ新潟大会5000mでは、中野翔太(3年)が13分39秒94、吉居駿が13分40秒26、溜池が 13分46秒16の自己ベストをマークしている。

 一方、吉居駿の兄であるエース・吉居大和(3年)は、レース中盤に差し込み(脇腹痛)が出て振るわなかった。それでも「3位以内」を目指した出雲では、前回の箱根1区で驚異的な区間新記録を打ち立てたエースを1区に起用。夏に故障があった吉居大の状態は「7割ぐらい」(藤原監督)だったが、最初の1kmを2分37秒で突っ込むと、集団から抜け出す。中盤以降は苦しみながらも、後続を9秒以上引き離す区間トップで発進した。

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