復活の一歩目を踏み出した不破聖衣来。監督にLINEで送った決意は「12月に日本記録更新」 (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 岸本勉●写真 photo by Kishimoto Tsutomu

 そんななかで、5000mを過ぎると一時は7番手まで下がった。

「5000mで下がった時はきついのかなと思ったが、後で聞いたら『あそこは変に行かないで、うしろで力を溜めていたほうがいいと思った』と話したので、そのレース勘はすごいと思った」と話す五十嵐監督はこう続ける。

「(ケガ後)6月頭から練習ができるようになり、ある程度の練習が積めたなかで、インカレに照準を合わせようという話になりました。ただ、そこで完全復活ではなく、次に目標とするもののための1歩目として出ようということでした。

 正直なところ、今の彼女にとっては1000m3分20秒ペースも本当にきついんです。練習の中で3分半のペース走をやっても、ペースが上がらない状態で、貧血になってからはポイント練習ができないなかでをジョグでつないでと......。無理をさせて今回臨んだというのではなく、ジョグができて、流しができてというような、体的な部分は何の不安要素もなくスタートラインに立てると判断した上で、無事にゴールしようというのが最大の目的のレースでした」

 それでも終盤になると彼女らしい力を見せた。1000mのラップタイムが3分22秒に落ち、その前の1周も82秒に落ちていた7200m過ぎに前に出ると、一気に77秒に上げた。

「元々飛び出すというプランはなかったのですが、やっぱり『ここで勝負したい』という思いがあったので。そこで気後れせずにいってみようと思いました。スパートをかけたところが本当に一番きつくて最後まで持つか不安だったけど、たくさんの支えてもらった方々のメッセージや顔が浮かんできて、『ここで頑張って恩返しをしたい』という気持で走っていました」(不破)

 8000m以降の各1000mは3分12秒、3分06秒と2位以下に差を広げる走り。五十嵐監督も「そこは持っている力というか、天才的な部分だと思います。今回も3分20~25秒で走ればいいと思っていたし、これまでの練習を見ていたなかでは考えられないくらいの走りでした」と驚く。

 不破も自身も「この大会自体も直前まで出るかどうかをすごく迷っていましたが、やっぱりケガなく走るというのがすごく楽しいなと改めて感じました」と笑顔を見せた。

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