「劣等感の塊」だったガリガリモデル→フィジーク王者に! 直野賀優「見返してやるぞって気持ちでやれているんです」 (3ページ目)

  • 武松佑季●取材・文 text by Takematsu Yuki
  • 柳岡創平●撮影 photo by Yanaoka Sohei

【見返してやるぞって気持ち】

ーー体をつくりあげるうえで、どのようなことを意識していますか?

 重たいものをラクに効率的に持つということをやらないことです。胸のトレーニングをするなら胸だけキツい状況をちゃんとつくれているかどうか。胸以外もキツい雑なトレーニングをして満足していないか。これを「ストリクト」というんですが、そこに対するこだわりは強いと思います。

 わかりやすいのはアームカールやバーベルカール。上腕二頭筋ってそんなに強い筋肉じゃないから重たいものを持つのに適してない。それなのに、大半の人は80キロなど重い重量をぶん回すように上げてしまっていたりする。だから、僕はしっかり二頭筋に重量を乗せる技術を持つことが大事だと考えています。

この記事に関連する写真を見る あとは負荷と出力の方向を一致させることですね。ダンベルを使ったサイドレイズは肩トレをするうえでポピュラーな種目ですが、重力があるから負荷の方向は真下にかかるのに対して、出力は斜め上になる。僕はこれにすごく違和感を覚えるんです。

 一方、ケーブルアップライトローは負荷が真下に対して、出力を真上にぶつけられるから違和感がない。このように、負荷と出力に対する違和感のない種目の選択は重視していますね。

ーーその哲学や日々の積み重ねがあってこそのパーフェクトボディ。

 これだけがんばって努力したのに勝てなかったらどうしようという精神的なプレッシャーは常にあります。減量は基本的な考え方、知識、技術が大事だけど、結局どんな方法をやってもしんどい。シーズン中は大会で負ける夢をよく見ます。

 他の選手のSNSもすごく見ます。トレーニングはそれぞれ合う、合わないがあるし、自分が今選んでいる種目に自信があるから、他の選手のトレーニングを参考にするわけじゃないけど、どんな体をつくっているのか気になってしょうがないんです。他の選手の仕上がりを見て、もっとしぼんなきゃいけないなとか、すごく神経質というかビビりまくってますね。

ーーだからこそ、目指すのは絶対王者。

 そうですね。去年もオーバーオール(無差別級)では2位。かなり気持ちをのせて仕上げられたと思っていただけに、一番悔しい思いをしました。

 僕の競技人生は挫折ばっかりです。今年も挫折から始まっているし、劣等感がなくなったことなんてない。だから見返してやるぞって気持ちで今までやれているんです。

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前編<フィジーク界のスター・直野賀優「評価されないフラストレーションは努めて飲み込む」 国内4連覇、世界一へ「一番に飢えている」>を読む


【プロフィール】
直野賀優 なおの・よしまさ 
1991年、宮崎県生まれ。筑波大学在学中からトレーニングを始める。JBBF(日本ボディビル・フィットネス連盟)主催の「オールジャパン フィットネス チャンピオンシップス」フィジークカテゴリーで2019年、2021年は176センチ超級で優勝、2022年は新設された180センチ超級で優勝。

プロフィール

  • 武松佑季

    武松佑季 (たけまつ・ゆうき)

    雑誌ライター。1985年、神奈川県秦野市生まれ。編集プロダクションを経てフリーランスに。インタビュー記事を中心に各メディアに寄稿。東京ヤクルトファン。サウナー見習い。

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