ガールズグランプリ昨季女王、柳原真緒 最高のメンタルを作り上げられた要因を告白「すべてで勝ちたい」 (2ページ目)

  • 加藤康博●文 text by Kato Yasuhiro
  • 安田健示●撮影 photo by Yasuda Kenji

【やり残したことのない状態を作る】

 そして2017年に日本競輪学校(現日本競輪選手養成所)に入学。ここで順調に力を伸ばし、在校成績1位、卒業記念レースでも優勝と同期のなかでトップの結果を残した。その要因として天性の運動能力とセンスがあったことは間違いないが、柳原はそれだけが理由とは考えていない。

「競輪学校時代、誰よりも自転車に乗った自信があります。私は天才肌の選手ではありませんし、小学校でソフトボールをしていた時から、上に行くには人の何倍も努力をしないといけないと感じていました。自転車競技の経験が少ないのですから、なおさら周りより頑張らないといけないと思っていたんです」

 練習が自分を支えているという思いはガールズケイリンの頂点に立った今も、変わることはないという。

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 冒頭に本人がブレイクの要因として口にした「勝負に勝てるメンタル」はどのように作り上げたのか。これも「練習」をキーワードに挙げる。

「常に他の選手の動きをイメージし、この選手はこうした動きをしてくるはず、それに対して自分はどう動くかを考えながら練習しています。他の選手の動きは常にチェックしていますし、それを基にシミュレーションする形です。それを繰り返しながら、自分自身の体の状態も上げていきます。結果を出すためには練習で自信をつけることが必要なのは言うまでもないですが、最も大切なのはやり残したことのない状態を作ってレースに臨むこと。それだけの練習ができればメンタルは自然と安定してきます」

 2022年のガールズグランプリはその最高のメンタルを作り上げられたレースだった。初の大舞台で緊張することは自分でも予想していたため、雰囲気に飲み込まれないよう、ひたすらイメージを作り、心の準備を繰り返した。その結果、「やることはやった。あとは走るだけ」という泰然自若の境地に辿り着き、落ち着いた精神状態でスタートラインに立てたという。

「その状態を作れれば、レースの勝負所では自然と体が動きます。いい時というのは本当にゾーンに入っていて、ここだと思った瞬間にペダルを踏むだけです」

 さまざまなシミュレーションをしたうえで万全の自信を手にし、本番では自分の感覚を信じる。それが自分のスタイルだと柳原は話す。

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