【スピードスケート】ソチ五輪へプレシーズン開幕。ベテランも若手も結果は上々。 (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 中村博之●写真 photo by Nakamura Hiroyuki

 バンクーバー五輪後はトレーニング法や道具の模索をしていた小平が、今季に向けて目標にしたのは、男子並みのトレーニングをすることだった。男子のトレーニングパートナーと同じくらいの負荷に耐えて体力アップを図らなければ、体格に勝る外国選手を超えることはできないし、急激にレベルアップしている世界に追いつけないと考えたからだ。

 夏の間にケガと紙一重のトレーニングを積めたことで体力が向上し、指導する結城匡啓(ゆうき まさひろ)コーチは「小平は一歩一歩をギュッと押して滑るタイプなので、ストロークを最後まで支えてくれる硬い刃を使いたかったが、去年までは履かせても力負けしていた」と話したが、今年からは硬い刃を使えるようになった。その結果ストロークも以前より伸び、減速することのない滑りができるようになったのだ。

 500mのあとの1500mは、昨年自身が出した国内最高記録に0秒19及ばないだけの1分59秒10で圧勝し、2日目の1000mも1週間前に出した国内最高に0秒17届かなかったが、1分16秒14の好記録で2年連続の3冠を達成。

「初日の500mを38秒0台で2本揃えたダメージは大きかったが、それでも1500mを滑りきれたし、疲れがある中でも1000mは去年より0秒3いい記録で滑れたのが収穫。体力はついていると思います」
 と手応えのあるシーズンインに笑顔を見せた。

 男子では加藤条治が、500mの2回目にジェレミー・ウォザースプーン(カナダ)が出していたリンク記録を0秒04更新する34秒64を出した。本人は「1回目が35秒08だったから、リンク記録はマグレもあると思う」と謙遜するが、その滑りは高校3年で世界に飛び出して05年11月の世界記録樹立まで駆け上がった頃のような、コーナーから直線へかっ飛びながら抜ける躍動感溢れる滑りを取り戻していた。

「スタートの出をいつもよりゆっくりさせたことでうまく加速できた。いつもはコーナーを速くしなきゃと焦っていたけど、今日はいつもより落ち着いて滑れたのが良かったですね。あんな記録が出て自分でもビックリしているけど、以前の持ち味であった爆発力が出たのは久しぶりでした。最近はそれがすっかりなくなって普通の選手になっていたけど、これを今シーズンであと1~2回出せれば、いい結果を残せると思います」

 このリンク記録はウォザースプーンが、今も残る34秒03の世界記録をソルトレークシティで出したシーズンの記録で、レベルは非常に高いもの。その記録更新は、ここ数年W杯で勝利をあげながらもなかなか納得するような滑りができていなかった加藤が、やっと長いトンネルを抜けたといえる一発だった。

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