山中慎介が絶賛する、那須川天心の「距離感」と「パンチの技術」 バンタム級日本人対決の可能性にも言及 (2ページ目)

  • 篠﨑貴浩●取材・文 text by Shinozaki Takahiro

【技術の高さが光る、左ボディや右ジャブ】

――左のボディの効果はいかがでしたか?

「的確に入っていましたね。相手がまったく反応出来ていませんでした。左の上下の打ち分けが巧みで、相手のパンチはもらわず、自身のパンチはしっかりとボディに入れていましたね」

――あの左ボディは、アッパーなのかストレートなのか......拳を返していないようにも見えましたが?

「縦拳のような感じで、アッパーストレートとでも呼べそうな、独特の軌道のパンチでしたね。僕が現役だった時は上下、左右のストレートの打ち分けで攻めましたが、サウスポーであのボディを打てるのは大きな強みです。中谷潤人選手(WBCバンタム級王者)も同様のボディを打ちますね」

――同じサウスポーの山中さんから見て、天心選手の右のジャブはいかがですか?

「非常にうまいですね。スパーリングでは最初、ジャブを出す時にちょっと前に行き過ぎていて、『距離が近すぎるかな。相手に右を合わせられたら怖いな』と感じましたが、すぐに的確な距離に修正できていました。もしかすると、あえて距離を詰める練習をしていたのかもしれません。天心レベルがやることは、こちらがわからないこともあります(笑)」

――試すということで言えば、今回の試合で見せたブロッキングも新たな試みでしょうか。

「そんな感じに見えましたね。自分から距離を詰めて、あえてブロックして受けた感じです。パンチは見えていたのでもらう怖さはなかった。ブロックで受けて、前の手で引っかけるフックも絶妙なタイミングでした」

――前の手で引っかけるようなフックは、キック時代から使っていましたよね。

「相手のバランスを崩す絶妙なタイミングで打つことは、簡単ではありません。技術の高さをあらためて感じましたね」

――天心選手の「継続して努力する姿勢」についてはどう感じますか?

「課題をひとつひとつ丁寧にクリアしていますね。新しい試みを実践することでスムーズにいかず、自分のリズムが崩れることはよくあるんです。でも彼は、基本を大事にしながら自分のスタイルも持ち合わせて、強くなるための調整を少しずつしているイメージですね」

――課題を克服する過程が楽しい、という印象がありますね。

「そう感じますよね」

――トレーナーの粟生隆寛さんの指導はいかがですか?

「しっかり指導していますね。お互いの意思を共有しながらトレーニングを進めている印象です。スパーリングやミットの最中にも話し合っていましたね」

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