井上尚弥の「フェザー級」転向を見据えたトップランク社の動き ライバル候補はまさかの王座陥落、高身長の新星が出現 (3ページ目)

  • 杉浦大介●文・撮影 text & photo by Sugiura Daisuke

【他にもフェザー級には強豪がゴロゴロ】

 トップランク社が目をかけていたフェザー級の選手はラミレスだけではない。IBF同級王座を2度防衛したルイス・アルベルト・ロペス(メキシコ)も同社の所属。ロペスは来年3月2日、アメリカで阿部麗也(KG大和)と指名防衛戦を行なうことが内定している。同興行では、11月下旬にトップランク社と契約したばかりのオタベク・ホルマトフ(ウズベキスタン)が、レイモンド・フォード(アメリカ)と対戦するWBA同級王座決定戦も組まれている。

 メキシカンのロペスにも興行価値はあるが、25歳のサウスポー、ホルマトフも11戦全勝(10KO)と、まだ底を見せていない。ホルマトフは昨年3月、トーマス・パトリック・ウォード(英国)との無敗同士の挑戦者決定戦で、一方的な5回KO勝ちを飾って話題となった選手。アマチュアでの戦歴、スキル、パワーをすべて備えており、名前を覚えておいて損はない実力者だ。

 こうして見ていけば、トップランク社が目指す方向性は明白だろう。ロペス、ホルマトフ、ラミレス、エスピノサ、阿部(※エスピノサと阿部は、まだトップランク社の契約選手ではない)らをお茶の間に売り込み、可能であれば統一戦も挙行する。その上で、井上の昇級を待つ。シナリオ通りなら、井上がフェザー級に挙がる頃には楽しみなカードがすぐ組める体制ができあがっているはずだ。

 トップランク社傘下以外でも、WBC王者レイ・バルガス、マウリシオ・ララ(ともにメキシコ)、ブランドン・フィゲロア(アメリカ)、ジョシュ・ウォーリントン(英国)といった著名選手が、フェザー級を主戦場にしている。7月に井上に完敗したスティーブン・フルトン(アメリカ)も、いずれはこの階級で戦う可能性が高い。

 これらのボクサーたちの誰もが、日本での井上との対戦を目指していると言っても大げさではない。

「井上が勝ち続けて階級を上げれば、そこで動く金額はさらに大きくなる。多くのボクサーが対戦を望み続けるはずだ」

 米ボクシングサイト『Boxingscene.com』のクリフ・ロールド記者が記したこのフレーズは正しい。日本の"モンスター"はスーパーミドル級のサウル・"カネロ"・アルバレス(メキシコ)、ヘビー級のアンソニー・ジョシュア(英国)などと同様、誰が相手だろうとすべての試合がメガファイトになる正真正銘のスーパースターだ。

 そんなボクサーが母国で生まれた日本にビッグイベントを行なえる土壌ができたおかげで、スリリングな時間はもうしばらく続きそうだ。

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