「神の左」山中慎介が見た那須川天心 KOできない理由、目指すべきボクサー、武居由樹との違いについても語った (4ページ目)

  • 篠﨑貴浩●取材・文 text by Shinozaki Takahiro

【同じくキックから転向した武居由樹との違い】

――構えも変わり、どっしりして見えました。

「初戦と比べると、パンチに体重が乗っていたと思います。パンチの威力を増すためにもっと体重を乗せることもできると思いますが、先ほども言ったように、天心のよさを消してしまう可能性がある。天心は、長谷川(穂積)さんのようなパンチのキレやスピードで戦うスタイルかなと思いますね」

――骨格やリーチを考えても、長谷川さんのスタイルが参考になるのかもしれませんね。

「長谷川さんもスピードやタイミングで相手をKOしていましたし、世界タイトルを獲得したことが自信になってKOを量産するようになった。天心もそうなる可能性はあると思いますが、天心にとってのきっかけが何になるのかは予測できません。試合の経験、日々の練習の中での気づきなど、さまざまな要因がありますから」

――KOが注目されましたが、2戦連続でほぼフルマークの勝利は素晴らしい結果だと思います。

「しかも2戦合計14ラウンドで1ポイントしか取られてないわけですからね。KO勝利への期待はあるものの、現状の結果でも十分に見事です。天心は最短で世界王者を目指しているわけではないですし、確実にステップアップしていると思います」

――天心選手はキックの経験からか、リズムやタイミングも独特ですね。

「そう思います。同じくキックから転向した武居(由樹)選手(現OPBF東洋太平洋スーパーバンタム級王者)もそう。キックをやっていたからこそのタイミングを持っていますね。ただ、武居選手のパンチの質は、いわゆる"パンチがある"というもの。パンチが"硬そう"に見えますね。相手の倒れ方を見ても、2人のタイプは違いますよね」

――武居選手はボクシング転向後、7戦7KO。パンチが"硬い"という言葉はよく耳にするのですが、そのメカニズムはどういったものなのでしょうか?

「インパクトの瞬間にしっかり握って拳を当てることが関係していると思います。もちろんそれだけではなく、当てる角度などさまざまな要素が関わってくる。帝拳ジムの先輩でも、ひ弱そうに見えるのに驚くほど硬いパンチ持つ選手もいました。ですから見た目の筋肉などはまた別物だと思いますね」

――インパクトという点では、山中さんの左ストレートは、腕を内側に大きくねじこむ動作があると聞きました。また、相手に当てるのは握った拳の"山"の部分の、人差し指の付け根の一点のみだったと記憶しています。それが衝撃を増加させる要因となるのでしょうか?

「そうですね、拳をしっかり返して、ピンポイントで打っていました。僕はリストも強いんです。とにかく左ストレートは時間をかけて練習しました」

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