「世界のTK」髙阪剛から見た朝倉未来の誤算 適正体重や「磨いたほうがいい」技術についても語った (3ページ目)

  • 篠﨑貴浩●取材・文 text by Shinozaki Takahiro
  • photo by 東京スポーツ/アフロ

【セオリーどおりにはいかない外国人選手との試合】

――フィジカルの強さの他に、外国人選手ならではの特徴はありますか?

「異常に手足が長いといったように、骨格が日本人と違う場合も多いですね。例えば三角絞めでも、通常は相手の頭を下げてセットして足をしっかり組むんですけど、僕がベースを取っている状態(頭を上げて胸を張って三角をかけられないようにする)でも、足が長い選手に三角クラッチされて絞められたこともあります。骨格が違うとセオリーどおりにいかないんですよ」

――規格外の体格というとセーム・シュルト選手(身長212 cmで『パンクラス』『K-1』などで活躍)を思い出すのですが、そういった選手との対戦が決まっても、練習相手を見つけるのが困難そうですね。

「まさにそうですね。だから、規格外の体格やフィジカルを持つ選手に対しては、常識にとらわれない独自の戦術や戦略を準備しておかないと勝つのは難しいと思います。

 話をケラモフに戻すと、うちのジム(ALLIANCE)の堀江圭功も今年の4月に試合をしたんです(ケラモフの2ラウンド一本勝ち)。やはりケラモフにいい状態で攻撃を出させるのは危ないので、相手を疲れさせて"削る"のがいいだろうと。プレッシャーをかけてスタミナを消耗させる戦略です。相手が疲れて隙が生まれれば、カウンターを取れる可能性もありますから。

 もうひとつは、意表をついて、あえて組みにいくことも準備していました。テイクダウンを取れる・取れないは別として、相手が想定してないことをやることも大切なので」

――相手の意表を突くことの重要性は?

「ケラモフのような選手は、自分が得意な分野を相手から仕掛けられると、必死になって嫌がることがあるんですよ。斎藤選手(斎藤裕/2021年『RIZIN.28』でケラモフに判定勝利)との試合ではイエローカード(ロープとショーツを掴む反則のため)をもらっていましたが、あの時も斎藤選手から仕掛けられたことが要因なんじゃないかと。

 ただ、堀江との試合でこちらの想像を上回ったのが、ケラモフのオフバランス、つまり体勢が崩れた状態からでも強打が打てる部分です。片足タックルに入りながら殴ってきましたから」

――未来選手もケラモフとの試合では、立ち合いでもっとプレスをかけるべきだったでしょうか?

「そうですね、もう少し早めにアクションを起こせばよかったと思います。自分のペースで試合をさせたらダメなんです。理想は、相手に試合をさせず、自分のペースで進めること。もちろんそれを実行するのが難しいんですけど、そのためには先手を打つことが重要。成功するかどうかは別として、相手の意識を揺さぶらないといけません。

 今回はそれがうまくいかなかったですね。未来選手が得意な戦術は、相手の隙を見つけて打撃を入れたり、カウンターを取ったり、リターンの時にガードが下がった隙をついて攻撃すること。あまり自分から仕掛けるタイプではないですが、今回もそういうアプローチを意識していたのかもしれません」

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