122連勝・藤波朱理が負ける日は来るのか? 吉田沙保里や伊調馨に学ぶ「もっと強くなるには、早く負けること」 (3ページ目)

  • 宮崎俊哉●取材・文 text by Miyazaki Toshiya
  • photo by AFLO

【吉田沙保里が負けた時は?】

 一方、今大会でも優勝者3名・第3位3名を輩出するなどOBが大活躍したMTX GOLDKIDSの成國晶子代表に「藤波が負けるとしたら、どんな状況か」と問いてみた。すると、「負ける想定ができないけど」と前置きしながらも、「唯一の作戦は、常に胸を合わせて飛び込まれないようにすること」と教えてくれた。

 また、藤川健治・元日本代表女子強化コーチは次のように説明する。

「藤波は手足が長く、懐(ふところ)が深い。攻撃力だけでなく、防衛力もあり、バランスと持久力もある。ある意味、吉田沙保里より攻略は厄介かな。組み手でも簡単には有利にさせてくれないから、ツーオンワン(自分の両手で相手の片腕を抱え込む)狙いで藤波の嫌がることを徹底するしかない」

 成國も藤川も、グレコローマンスタイルのようなレスリングを徹底して、藤波のタックルを封じろということか。

 3者の意見をまとめると、藤波にいつものレスリングをさせない、ということだろうか。

 得意のタックルに入らせず、平常心を奪い、多少なりともイライラした状態で無理にタックルに入ってきたところをカウンターで反撃する。そう、吉田沙保里が連勝記録を2度までも阻止された「タックル返し」の時のように......。

 だが、我々が真に期待しているのは、そんな相手に、そんな戦法で負ける藤波の姿ではない。我々が見たいのは、そのあと。戦いに敗れて連勝記録が止まったあとの藤波だ。

 吉田沙保里は話す。

「私が敗れたのは、2008年も2012年もワールドカップ団体戦であり、"個人戦"では206連勝と称えてくれる方もいますが、私は勝ち続けることで成長したのではなく、負けて強くなりました。

 負けて初めてわかることもありますし、負けたからこそ徹底的に取り組めることもある。もし、あそこで負けていなかったら、北京でも、ロンドンでも、オリンピックの舞台でつまずき、金メダルを逃していたでしょう」

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