錦織圭「奇跡の9カ月」の再現なるか 復活への道のりで思い出す2018年の快進撃 (4ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by Kyodo News

【錦織の次戦は北米のコート】

 先ほど、この5年間で大きな地殻変動が起きたと書いた。だが、一度は表舞台を去ったかに見えたベテランたちも、コートでしか得られぬ刺激や高揚感に、今なお純粋な渇望を抱いている。

 錦織が「一緒に成長してきた選手」と認めるミロシュ・ラオニッチ(カナダ)は、先週のリベマオープン(ATP250/芝)で1年11カ月ぶりにツアー復帰。

 初戦で39位のミオミル・ケツマノビッチ(セルビア)に快勝し、関係者たちを驚かせた。2回戦では敗れるも「初戦と2回戦の間が2日空いたのは不運だった。調整が難しくなった」と滲ませる悔いに、むしろ手応えがあふれた。

 2019年に人工股関節を入れたアンディ・マリー(イギリス)は、全豪オープンでは5時間越えの死闘を立て続けに制し、医療関係者たちを「ありえない」と驚嘆させている。チャレンジャーにも出場し、今季早くも3大会制覇。その最新のタイトルは、先週のノッティンガム大会で手にしたものだ。

 自身の優勝の数時間後に、錦織が海の向こうのプエルトリコで戴冠したことを知ったマリーは、「復帰戦での勝利、よくやった!」と絵文字付きのツイートで祝福した。

 そのマリーはチャレンジャー優勝の翌週もロンドン開催のATPツアーに出場し、ウインブルドンへと向かっていく。

 一方の錦織は、いったんの小休止を挟み、北米のハードコートを中心に復活への道を進む予定だ。

 深く腰を落とし、相手の動きをつぶさに両目で捕え、獲物に飛びかかるようにボールに向かい、右腕を一閃する──。

 錦織のリターンゲームが、また始まる。

プロフィール

  • 内田 暁

    内田 暁 (うちだ・あかつき)

    編集プロダクション勤務を経てフリーランスに。2008年頃からテニスを追いはじめ、年の半分ほどは海外取材。著書に『錦織圭 リターンゲーム』(学研プラス)、『勝てる脳、負ける脳』(集英社)など。

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