平野美宇と伊藤美誠のパリ五輪選考レース最終局面 女子卓球シングルス枠をつかむのは? (2ページ目)

  • 井本佳孝 取材・文 text byImoto Yoshitaka

【伊藤は満身創痍の状態から巻き返し】

 一方、現在3位の伊藤は平野以上に苦しい時期を過ごしてきた。昨年の第2回選考会「2022 全農CUP TOP32福岡大会」こそ優勝したものの、今年に入って腰と臀部(でんぶ)のケガに悩まされた。1月の全日本選手権ではノーシードの高校生に完敗し、まさかのベスト16で敗退している。

 第4回選考会「2023 全農CUP 平塚大会」でも2回戦で敗れ、選考レースでは7位に後退。満身創痍の状態のまま、切れ目なく続いていく過酷な戦いに涙を見せるシーンもあるなど、3大会連続の五輪出場に黄信号が灯ったかに見えた。

 しかし、徐々にコンディションを戻すと本来の実力を発揮。南アフリカで行なわれた5月の世界卓球でベスト8に進出し、7月に開催された第5回の選考会「2023 全農CUP 東京大会」では平野との激闘を制して決勝に進出した。決勝では早田に敗れたが、復調をアピールして充実感を滲ませた。

 伊藤にとって、平野に対して大きなアドバンテージとなるのは豊富な経験値だ。五輪に2大会連続で出場し、合計4個のメダルを獲得。厳しい局面を乗り越えてきた場数が、プレッシャーがかかる選考レース終盤の戦いでも生きてくるだろう。

【残り2戦で得られるポイントは?】

 ただ、今大会の女子の優勝候補筆頭はやはり早田だろう。

 序盤から安定感ある戦いでポイントを積み重ねてきた早田は、5月の世界卓球シングルスで銅メダル、9月から10月にかけて行なわれた「第19回アジア競技大会」では銀メダルを獲得。世界ランキングでも伊藤を上回り、日本勢の最高位をキープしている(11月21日更新のランキングで早田が5位、伊藤が10位)。拮抗した展開でもメンタルの強さが光り、今や日本女子のエース的な存在になった。

 国内では頭ひとつ抜けており、2位の平野とは264.5点、3位伊藤とは289点の大差がついている。第6回選考会の優勝者に与えられるポイントは100点、来年の全日本選手権の優勝者に与えられるポイントは120点のため、他の選手が中国トップ3選手を撃破するポイント加算の可能性はあるものの、パリ行きはほぼ確実だ。

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