水谷隼から見た男子卓球界の現状と、張本智和に次ぐ選手が世界で勝つために必要なこと 日本の指導者育成の課題にも言及した (2ページ目)

  • 高樹ミナ●文 text by Takagi Mina
  • photo by Kyodo News

――その張本選手に次ぐパリ五輪代表選考レースの2番手、戸上隼輔選手のことはどうご覧になっていますか?

水谷 世界で通用するかというと、まだまだ。戸上選手は全日本選手権を連覇している日本のトップですけど、世界のトップは別次元なんです。どれだけ日本で強くても、世界のトップには世界のトップの戦い方のセオリーがあるんですが、戸上選手はそういうものをあまり知らない。日本で戦っている自分のプレーを、そのまま世界でやろうとしているように見えます。そのままじゃ勝てないし、未熟な部分がたくさんありますね。

――世界のトップ選手のセオリーというのは、例えば?

水谷 強い選手はサービスを台から出したりしません。でも戸上選手はバンバン出すし、レシーブもミスします。チキータもそうですけど、同じミスを何本もする。それを修正する力が足りないし、相手の弱点を突くプレーも少ないです。

 自分の得意なプレーをすれば強いのは誰でもそうですけど、世界のトップ選手は自分の力を出すというよりも、まず相手の弱点を探す戦術を取り、それを見つけて攻めるんです。それが世界のトップ選手のセオリー。でも戸上選手は、自分のやりたいことをやって弱点をさらけ出し、相手にそこばかり攻められて終わっちゃう試合が多いように思います。

――戸上選手の一番の課題は?

水谷 まずはレシーブです。チキータに頼りすぎてしまうところを改善しなきゃいけないのと、簡単なミスを減らすことですね。

――本人もそのための練習をしているようですが......。

水谷 うーん......もしかすると改善できる選手とできない選手がいるのかもしれません。「ミスしても、自分らしくやったから仕方ない」と割りきっちゃうタイプもいるので。もちろん、そういう考え方が必要な場合もありますが、自分らしいプレーを抑えてでも点数を取りにいくような、器用な部分も身につけていかないと。それは、練習すれば身につくものだと僕は思いますけどね。

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