富永啓生の決断は「本当に最後の最後」 NBA挑戦は持ち越しもネブラスカのファンは大歓喜 (2ページ目)

  • 杉浦大介●文 text by Sugiura Daisuke
  • photo by Getty Images

 それと同時に、もちろんジョーダンのケースとは大きくスケールは違うが、富永がカレッジキャリアを継続すると発表したことはネブラスカ大の支持者たちを歓喜させることにもなった。

"バスケットボール界の希望"は、もはや日本だけのものではない。富永は、ネブラスカでは絶大な人気を集めるローカルヒーローであり、名だたる強豪校が揃った「ビッグ10カンファレンス」でも注目される屈指のスコアラーになった。

 そんな22歳がカレッジに残ると決め、地元がどれだけ興奮したかは、富永のこんな言葉から推し量ることができる。

「今までにないぐらいの盛り上がり方でした。自分が戻ってくることを、それだけ喜んでくれたのは本当にすごく嬉しいですし、(アーリーエントリー取り下げの)ひとつの理由でした。街全体で応援してくれるっていうのは本当に嬉しいこと。反響はすごかったですね......」

 隔世の感がある。昨季開幕の時点で、富永は再建途上のネブラスカ大のベンチから登場する荒削りなシューターという印象だった。レンジャー・カレッジからの編入1年目となった2021-2022シーズン、30 試合で平均16.5分をプレーし、5.7得点、FG成功率37.3%(3Pは33.0%)。その頃は「目標はNBA」という言葉を、多くのファン、関係者は真剣には捉えなかっただろう。

 しかし昨季、大きく成長した富永はライジングスターの階段を駆け上がっていく。

シーズン平均13.1得点(FG50.3%、3P40.0%、FT85%)と好成績をマークし、特に2月1日以降は平均20.3得点。最後の9戦中、6勝と急上昇した母校の"牽引車"になった。開幕前は大苦戦の予想も多かったネブラスカ大が、勝率5割(16勝16敗)を残せたのは、富永の貢献が大きかった。

「カリスマ性を備えた日本人ガードは、昨季後半にネブラスカを一変させた。そのシュート力、プレーメイキングはヘッドコーチの(フレッド・)ホイバーグのオフェンスの中で解き放たれた。常に笑顔な彼のプレーを見るのは喜びであり、ファンを喜ばせるエンターテイナーでもある」

 オマハ・ワールド・ヘラルド紙のスポーツコラムニスト、トム・シャテルのそんな記述を読めば、今の富永がネブラスカでどれだけ評価され、期待されているかが伝わってくるはずだ。

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