F1新時代、2024年の焦点《前編》 ドライバーのシート争奪戦「2年後の大変革へ」今季前半戦が勝負 (3ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki

 シーズン終盤戦はマシン開発を止めたため、アップデートを続けたメルセデスAMGに再び逆転される展開になりましたが、2024年に向けて正しい方向に進んでいることは明らか。さらにはディレクター陣を新規に獲得し、刷新した技術体制が本格稼働するほか、2024年型マシンは念願の自社風洞で開発が進められており、さらなる躍進が期待できます。

 一方のアストンマーティンも、2023年は後半に失速したように見えたのは、ライバルたちが躍進したため。彼らは2026年にトップに立つことを目標に、一歩ずつ前進していく計画です。

 昨年前半には新ファクトリーが稼働を始めました。マクラーレン以上に新たなリソースを使って開発した初めてのマシンは2024年型ということになり、彼らの計画でいえば「2024年は常に表彰台を争う」というポジションになります。2025年に優勝争い、2026年にチャンピオン争い、という目標を達成すべく、今年はさらに着実な一歩を進めてくるはずです。

 マクラーレンとアストンマーティンの躍進が物語るのは「カスタマーチームでも上位争いに加われる」ということです。パワーユニットは2025年まで開発が凍結されており、基本的な仕様に変更を加えることはできません。性能に関しても、4メーカーで常用最大パワーにはほとんど差がなく、回生時間の差はあるものの、それは決勝での競争力がメイン。

 マシン設計という点において大きな差が出にくくなったことで、カスタマーチームでもワークスと変わらない競争力を持ったマシンを開発することが可能になってきました。その状況は2024年も変わらないため、もしかするとマクラーレンやアストンマーティン以外のカスタマーチームも躍進を果たし、トップ5どころかトップ6の争いになる可能性もありそうです。

【3】次のエースは誰だ? 2026年を睨んだドライバー市場

 F1は2026年に車両・パワーユニットともに「大変革」が待ち構えており、アウディやフォードの参戦も含めて大きな変化を迎えます。

 それゆえにドライバー市場は、2026年ではなく前年度の2025年から新時代に向けた体制へと移行し、チームの基礎固めをしておくのが定石となるでしょう。つまりF1ドライバーたちにとっては、2025年のシート争いこそが重要な意味を持っています。

3 / 4

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る