角田裕毅11位ノーポイントであってもキャリアベストの走り「本当に、本当に、いいレースだった」 (2ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • photo by BOOZY

【勝負どころで全開プッシュ】

 アルファタウリは予選で大苦戦を強いられたが、前夜に雨が降ってラバーが流れ、土曜より10度も路面温度が下がった決勝では見違えるような好ペースを見せた。予選よりも大幅に決勝にフィットしたセットアップだったとも言える。

「予想以上によかったですね。ミディアムも含めて全体的にレースペースはよかったと思いますが、特にハードはよかったので、そこがこのレース展開につながったと思います」

 たまらずピットインしたヒュルケンベルグに対し、「ここが勝負どころだ。全開でプッシュしろ」と指示を受けた角田は、3周ステイアウトして自己ベストタイムを連発。見事にヒュルケンベルグに対してポジションを守りつつ、第2スティントは3周フレッシュなミディアムを履いて戦えるアドバンテージを作った。

角田はタイヤマネージメントも完璧だった角田はタイヤマネージメントも完璧だったこの記事に関連する写真を見る 第1スティントのタイヤマネージメントが、レース終盤のアドバンテージになる。レース序盤にタイヤ交換を済ませたドライバーたちに比べて20周もフレッシュなタイヤ、それもハード勢に対して角田はミディアム。この差を生かして、角田は猛攻を仕掛けた。

 角田はとにかく前だけを見てレースをしていた。

「今日は行けるな、と思った瞬間は最後までありませんでした。そんなことを考える余裕はありませんでした。でも、ブレーキングには自信があったので、とにかくブレーキングで思いきって突っ込んで抜くことができました」

 アレクサンダー・アルボン(ウイリアムズ)を抜き、ボッタスもパス。いずれも思いきりのいい飛び込みと、相手に反撃の余地を与えない絶妙なライン取りで、一発でオーバーテイクを決めた。

 バトルが長引けば長引くほど、相手にはこちらの攻撃に対して学習の機会を与えることになる。そして、後方を走ってバトルを仕掛けることでタイヤを傷めてしまう。

 だからこそ一発で仕留める、というのは極めて重要なことだ。その能力ゆえにマックス・フェルスタッペンが怒濤の追い上げで逆転優勝を果たすことができたのと同じように、角田もキレのある走りを見せた。

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