「トヨタの秘蔵っ子」がホンダと日産にリベンジ!お膝元の富士スピードウェイで「スープラ」はやっぱり強かった (3ページ目)

  • 吉田知弘●取材・文 text by Yoshita Tomohiro
  • 吉田成信●撮影 photo by Yoshida Shigenobu

【トヨタが反撃の狼煙をあげた】

 スーパーGT第2戦・富士の予選では、ナンバー100のSTANLEY NSX-GT(山本尚貴/牧野任祐)がポールポジションを奪取。決勝前のパドックでは「ホンダ優勢」の雰囲気があった。

 そのなかで6番グリッドからスタートした36号車は、1周目に接触を受けて10番手まで順位を下げてしまう。しかし、前半担当の坪井が「1台ずつ抜いていくことに集中した」と語るとおり、周回を重ねるごとに順位を上げて20周目に3番手まで浮上。さらに100号車がピットに入ったのを見ると坪井は一気にペースアップし、自分たちのピットストップ時間を稼いだ。

 この勝負どころで、メカニックも落ち着いていた。ピット作業をミスなく完璧に遂行し、100号車から首位のポジションを奪うことに成功したのである。

 その後も坪井の勢いは止まらない。着々とリードを広げて、2度目のピットストップで宮田に交代する。すでに15秒以上のリードを築いていたが、宮田も最後まで集中力を切らさず速さをキープ。終わってみれば、2番手に28.5秒もの大差をつけての今シーズン初優勝となった。

 2023 年シーズンの下馬評では、開幕前から速さを見せていたホンダ勢と昨年圧倒的な強さで王者に輝いた日産勢が有利と言われ、トヨタ勢の存在感は影を潜めていた。しかし、トヨタの"お膝元"である富士スピードウェイでふたりの「秘蔵っ子」が反撃の狼煙をあげた。

「スープラは富士を得意としているので、今回勝たないと厳しいと思っていました。予選でホンダが速かったので『まずいかも?』という感じもありましたが、勝つことができてよかったです」(坪井)

「チームの全員が『この富士で勝ちたい』と思っていたので、それが叶ってホッとしています。僕たちとしては、ようやくスタートラインに立てた。ここからの積み重ねがすごく大事になってくると思うので、1戦1戦ベストを尽くしていきたいです」(宮田)

 レース後のパルクフェルメや表彰式で、坪井と宮田の満面の笑みが印象的だった。ドライバーズポイントも首位から5ポイント差の3番手に浮上。GT500クラス王座獲得に向けて、中盤戦もトヨタ期待の「ダブルエース」から目が離せない。

プロフィール

  • 吉田知弘

    吉田知弘 (よした・ともひろ)

    モータースポーツジャーナリスト。1984年12月19日生まれ、石川県出身。2011年よりスーパーGT、スーパーフォーミュラなど国内4輪レースを中心に取材。専門誌やweb媒体などで執筆中。日本モータースポーツ記者会所属。

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