【F1】ホンダ総責任者が語る「ストレートで伸びない3つの理由」 (3ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki  桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

 まず、論争の火種となった「25馬力発言」報道の真実とは何だったのか――。

「私は、25馬力という具体的な数値は語っていません」

 新井総責任者は言う。しかし、パワーユニットの出力という点で、ルノーより優っていることも事実だと語る。それは、新井が以前から主張していたことである。

 では、パワーが同等以上なのに、どうして「ストレートで3秒も失う」のか。その理由は3つあるという。

 まずひとつは、「ディプロイ」と呼ばれるERS(エネルギー回生システム)のアシスト量だ。パワーユニットは約700馬力のICE(エンジン本体)に加えて120kW=約160馬力のアシストが可能だが、ホンダのそれはターボの熱から回生するMGU-H(※)が熟成し切れておらず、他メーカーに較べて1周で使用できる時間が短い。スロットルの全開時間が短いサーキットでは問題にならないが、全開時間が長くなるとMGU-Hが回生し切れず、「ディプロイ」が切れてしまうのだ。すると、160馬力が失われてしまう。長いストレートエンドで失速するのは、そのせいだった。

※MGU-H=Motor Generator Unit-Heat/排気ガスから熱エネルギーを回生する装置。

 新井総責任者の言う「ルノーには負けていない」とは、エンジン本体(ICE)とターボ(TC)の出力であり、エネルギー回生システム(ERS)のアシストは上限が160馬力と決まっているのだから、「ディプロイが機能している間はパワーユニット全体でも負けていない」という意味であって、パワーユニット全体の総合性能とは別の話だ。そこが混同され、正しく理解されていないがために、先のような批判を受けることになっている。

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