逃げ馬劣勢の有馬記念 タイトルホルダーは有終の美を飾ることができるか (2ページ目)

  • 新山藍朗●文 text by Niiyama Airo

 まず気になる点は、タイトルホルダーと有馬記念の相性だ。

 中山コースはこれまでに10戦して4勝、2着2回、着外4回。勝った4勝のうち、3勝はGIIで、2着2回のうち1回はGI皐月賞(中山・芝2000m)でのもの。どちらかと言えば、相性のいいコースと言えるが、こと有馬記念に限っては、一昨年が5着、昨年が9着と振るわない。

 だが、その敗戦の内容をよく見てみると、それぞれに理由があって、有馬記念は「相性が悪い」と悲観するほどではないことがわかる。

 まず一昨年は、何より大外の8枠16番を引いたことが響いた。過去10年を振り返ってみても、8枠発走で連対した馬は1頭もおらず、馬券圏内(3着以内)に入ったのも2018年のシュヴァルグランの例があるだけ。しかも、タイトルホルダーが逃げたい馬であることを考えれば、これは重すぎるハンデであり、大きな不利だったことは間違いない。

 さらに言えば、この時は"天敵"とも言える快速馬パンサラッサも出走していた。先頭に立って自らのレースを作ることができないうえ、勝負どころの3コーナー過ぎからパンサラッサを捕まえるまでにかなりの脚を使わされた。

 結局、直線で一度は先頭に立つも、最後は末脚秘めるライバルたちにかわされてしまったが、これだけ不利な条件が重なったことを思えば、5着は善戦と言っていい。

 昨年は、極端な泥んこ馬場に苦しめられたGI凱旋門賞(11着。フランス・芝2400m)帰り。その疲れが抜けきらず、万全な状態でなかったことは明らかだ。

 なおかつ、パンサラッサのような展開上の天敵はいなかったものの、のちに"世界一"まで上り詰めたイクイノックスがいた。そのイクイノックスに直線入口で並びかけられては、逃げ馬としてはなす術がなかった。結果、直線でズルズルと後退して9着、という結果も致し方がない。

 こうしてみれば、過去2戦の有馬記念は「ノーカウント」とは言わないまでも、敗れたことに同情できる点はいくつもあった。つまり、有馬記念との相性は悪かったのではなく、単に運やツキがなかっただけだ。

 そんな有馬記念の"悪縁"が過去2回のレースで一掃されていれば、今年こそ、タイトルホルダーの躍進が期待できる。前出の専門紙記者が言う。

「第一に体調面。このレースを最大目標としてきただけあって、前走のジャパンCからさらに一段、二段の上積みが見込めます。

 そのうえ、今回はメンバー的に他に逃げ馬がいません。タイトルホルダーにとって、待望の単騎逃げが叶いそうです。

2 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る