堤礼実アナがかつてないほどの衝撃を受けた一戦を振り返る。「私の競馬観戦史上、最高のレース」 (2ページ目)

  • スエイシナオヨシ●撮影 photo by Sueishi Naoyoshi

 とはいえ、このレースが私史上最高のレースになったのは、勝ったイクイノックスもさることながら、世紀の大逃げを打ったパンサラッサがいればこそです。

 ノースブリッジやジャックドールなど、他にも前へ行きたい馬はいましたが、パンサラッサは内枠(2枠3番)に入ったことを生かし、ハナを譲ることなくハイペースでどんどん飛ばしていきました。馬の能力はもちろんのこと、鞍上の吉田豊騎手の好判断、そして人馬の絶妙な呼吸によるものだったのでしょう。

 道中、後続との差は14~15馬身差がついていたようで、勝ったクリストフ・ルメール騎手でさえ、勝利ジョッキーインタビューで「パンサラッサは見えていなかった」と話していたほど。そして、その差がほとんど縮まることのないまま、パンサラッサは4コーナーを回って直線へ。これは、さすがに届かないのではないか、と思いました。

 そこから、勝ったイクイノックスや3着に入ったダノンベルーガらがものすごい勢いで差を詰めてきたのは、直線の半ばを過ぎたあたりだったでしょうか。ゴールまで、時間にすれば10秒あまりの出来事だったと思います。

 その際、私は理屈抜きに「私は今、とんでもないものを見ているのではないだろうか」と感じていました。結果を知った今、改めてレース映像を見返しても「これ、本当に届くのかな?」と思ってしまうくらいですから。勝敗が決する瞬間まで、本当に目が離せませんでした。

 あと、これはあとになって知ったことですが、パンサラッサの前半1000mの通過タイムは57秒4。1998年の同レースで、サイレンススズカが逃げた時と同じだったと聞きました。

 私は、サイレンススズカの走りを実際に見たことはありません。ですが、武豊騎手から思い入れのある1頭だとうかがったことがありますし、圧倒的な強さを見せた逃げ馬として、多くの競馬ファンの記憶に残る名馬だったことは知っています。

 残念ながら、サイレンススズカはその天皇賞・秋でレース中に故障し、予後不良となってしまいましたが、そのまま無事にゴールまで走っていたら、どんな結果になっていたのか。それは今もなお、ファンの間で語られる永遠の問いであり、興味の的です。

2 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る