「ウマ娘」でも人気キャラ、菊花賞を制した名馬たち。魅力あふれる名レースを振り返る (4ページ目)

  • 河合力●文 text by Kawai Chikara
  • photo by Sankei Visual

 最後に紹介したいのが2012年、ゴールドシップの勝った菊花賞だ。

 ゴールドシップといえば、ウマ娘の中でも随一の気分屋で凶暴なキャラ。もちろん、この性格も競走馬・ゴールドシップがモデルとなっている。3歳春に皐月賞を勝ったゴールドシップは、この菊花賞でも破天荒なレースを見せた。

 スタートが苦手なゴールドシップは、菊花賞でも18頭中17番手の位置取りでレースを進めることとなる。前半は気分が乗らないこの馬にとっては"定位置"だが、少しのロスも致命的となるスタミナ戦の菊花賞では不利なポジションだ。

 驚いたのは向正面、残り1000mほどに差し掛かったとき。ゴールドシップの白い馬体が一気に先頭集団へ加わったのである。

 京都競馬場は、ちょうどこのあたりが上り坂となっており、その後、頂上を越えると下り坂を経て直線に入る。ゴールドシップは上り坂のゾーンでスパートをかけたのだが、この戦法はタブーとされていた。京都の長距離戦において坂でスパートをかけると最後まで持たないからだ。

 だが、ゴールドシップはバテるどころか、直線でさらにギアを上げて後続を突き放した。規格外のスタミナ。まさに常識を覆した破天荒なレースぶりだった。

 この菊花賞を含め、引退までにGⅠを6勝したゴールドシップ。まともにスタートを決めて、そつなく先行すれば、さらに上の成績を残せたのかもしれない。でもそれは愚問というもの。このスタイルと性格があってこそのゴールドシップである。

「最も強い馬が勝つ」と言われる菊花賞。今年はこの舞台でどんなドラマが起きるのか。かつての勝ち馬のように、のちにウマ娘となって愛されるような新しいスターの誕生に期待したい。

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