【競馬】有馬の主役。エピファネイアを蘇らせた「真夏の修行」 (2ページ目)
これまでの実績からすれば、まさしく「不本意」と言えるふたつの敗戦だった。陣営は立て直しが急務と判断し、エピファネイアをすぐに放牧に出した。結局、その休養は5月から10月までの長期に及んだ。しかし、この6カ月が同馬にとって、復活の足がかりとなる。なぜなら、エピファネイアはこの休養中に"修行"とも言える、「夏の猛トレーニング」をこなしていたからだ。
放牧に出たエピファネイアが身を寄せたのは、ノーザンファーム早来(北海道安平町)。まだデビュー前の同馬が鍛錬を積んでいた場所でもある。その当時からエピファネイアを見ていたノーザンファーム早来の森下政治氏は、5月にやってきた同馬の姿を見て、ある「変化を感じた」という。
「ひと目見て、体の寂しさを感じました。背中やお尻の筋肉が落ちていて、かなり疲れていることがわかりましたね。もともとエピファネイアは、とても見栄えのいい馬。デビュー前から、同世代の中では別格の印象だったんです。そのため、余計に体の寂しさが目立ちました」
明らかに体の筋肉が落ちていたエピファネイア。その深刻な馬体を見て、最初は何より疲労回復に専念したという。焦らず、じっくりと体が回復するのを待った。その甲斐あって、暑さが増してくる頃には、馬体自体は本来のエピファネイアに戻っていた。
そして、ここから「夏の猛トレーニング」が始まった。森下氏がその理由を語る。
「同世代と戦っていた昨年とは違い、今年はいろいろな世代と戦わなければなりません。だからこそ、一層パワーアップさせる必要がありました。そこで、エピファネイアには普通の馬ではやらないハードな調教メニューを課して、負荷をかけたんです」
ノーザンファーム早来の馬たちは、通常なら週1回、坂路コースで速いタイムを出していく。だが、エピファネイアはこの夏、週2回~3回の頻度で速い調教をこなしていった。春の疲れをいやすだけでなく、この休養期間にさらなるパワーアップを図ったのだった。
通常はやらないようなハードメニューを行なっても、エピファネイアはへこたれなかった。ただ、この調教には別の苦労もあったという。精神面への配慮である。
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