三笘薫とブライトンの今季を占う 飛び交う移籍情報のなかカギを握る選手とは (3ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by REX/AFLO

【90年代のフォッジャを想起】

 出入りを計算した時、カギになるのはやはりカイセドになる。残留すれば戦力アップ。昨季の6位よりさらに上が狙えそうなムードになるが、移籍すれば戦力ダウンは否めない。

 それでもデ・ゼルビ監督の評価は、成績の大幅な落ち込みさえなければ揺るがないはずだ。翌シーズンには、選手以上に飛躍している可能性もある。それほど昨季のブライトンはいいサッカーをした。英国のサッカー史に爪痕を残した。プレミアリーグ6位という成績以上の、イングランドのみならず欧州全土にまで響き渡る斬新なサッカーを展開した。

 もちろんカイセドに加え、三笘までチームを去ることになれば、肝心のサッカーの魅力そのものに影響が出る。左右のウイングが大きく開くサイドアタックが敢行できなくなれば、なにより支配率に影響が出る。ウイングを経由しない真ん中中心のパスワークに陥れば、ボールを奪われた時、リスクが増大する。反転速攻を浴びやすい、粗野な攻撃的サッカーに陥る。

 ブライトン級のクラブがプレミアで長年にわたって上位を維持することは難しいだろう。ここ何年かに限った話だと思われる。想起するのは1990年代にセリエAで中位まで上り詰めたフォッジャだ。監督は先述のゼーマンで、守備的サッカーがスタンダードなイタリアで話題を集めた。

 フォッジャは数年で失速。以来、セリエAに返り咲くことはできずにいる。だがその一時の、華々しくも痛快な快進撃は、いまだ多くのファンの記憶に鮮明に刻まれている。筆者もしかり。これまでインタビューしたなかで、ゼーマンほど緊張した監督はいない。

 攻撃的サッカー陣営の系譜を語る時、横綱格をヨハン・クライフだとすれば、ゼーマンは小結あたりにはランクされる名前だ。グアルディオラとデ・ゼルビの関係も、現在はそれぐらいだと思われる。三笘が両者の関係に絡むことはあるのか。目を凝らしたい。

プロフィール

  • 杉山茂樹

    杉山茂樹 (すぎやましげき)

    スポーツライター。静岡県出身。得意分野はサッカーでW杯取材は2022年カタール大会で11回連続。五輪も夏冬併せ9度取材。著書に『ドーハ以後』(文藝春秋)、『4-2-3-1』『バルサ対マンU』(光文社)、『3-4-3』(集英社)、『日本サッカー偏差値52』(じっぴコンパクト新書)、『「負け」に向き合う勇気』(星海社新書)、『監督図鑑』(廣済堂出版)、『36.4%のゴールはサイドから生まれる』(実業之日本社)など多数。

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