鎌田大地がピッチの上で泣き崩れた夜「僕のサッカー人生で初めて報われた瞬間」フランクフルトの5年間で初めて見た素顔 (3ページ目)

  • 了戒美子●取材・文 text by Ryokai Yoshiko
  • photo by AFLO

【語られたフランクフルト愛】

 たしかに鎌田は、王道を歩いてきた選手ではないかもしれない。だが、ここまで強いコンプレックスを持っていたことに驚くと同時に、それを見事にひっくり返した瞬間に立ち会った感触があった。また、この時に口にした、フランクフルトというクラブへの想いも印象的だった。

「フランクフルトは今、ドイツのなかでも大きいクラブになろうとしていて、それはすごくいいこと(CL出場で)お金も入ってきて、よりいっそう注目されるクラブになると思う。このチームが大きくなっていこうとしているなかで、自分もその歴史の一部となれているのは、本当にうれしいですね」

 契約満了でクラブを退団することを、鎌田は今季の早い時期から決めていた。契約満了ということは、クラブに残す移籍金もなければ来季の構想に入ることもなく、試合のメンバーから外される可能性が高くなることも覚悟していたと語っている。

 実際、後半戦に入って不調も重なり、出場機会のない試合が続いた。それでも「最後までちゃんとやると、監督と約束したから。人として、それは貫きたい。フランクフルトとはハッピーエンドで終わりたい」と、あらためて自分に言い聞かせるように話していた。その言葉からも、この5年間を鎌田がどれだけ大事に思っているか、知らされた気がした。

 自身を大きく成長させたフランクフルトから、次はどこへ羽ばたくのか。新天地はまだ発表されていないが、「自分のなかでは決まっている」と言う。その発表を楽しみに待つとしたい。

プロフィール

  • 了戒美子

    了戒美子 (りょうかい・よしこ)

    1975年生まれ、埼玉県出身。2001年サッカー取材を開始し、サッカーW杯は南アフリカ大会から、夏季五輪は北京大会から現地取材。現在はドイツを拠点に、日本人選手を中心に欧州サッカーを取材中。著書『内田篤人 悲痛と希望の3144日』(講談社)。

3 / 3

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る