鎌田大地がピッチの上で泣き崩れた夜「僕のサッカー人生で初めて報われた瞬間」フランクフルトの5年間で初めて見た素顔 (2ページ目)

  • 了戒美子●取材・文 text by Ryokai Yoshiko
  • photo by AFLO

【鎌田大地のコンプレックス】

 昨季もELにおいて、鎌田はフランクフルト快進撃の立役者となった。レンジャーズとの決勝戦でもPKを決めてクラブ史上初のCL出場を実現させた重要人物であることは、フラッグに描かれた並びからも伝わった。

 ただ、肝心のこの日のプレーではその存在感を出しきれず、シュートゼロ本に終わった。おそらく本人にとって、悔いの残る試合になってしまっただろう。

 唯一の見せ場は前半16分、自陣からのカウンターでジブリル・ソウからのパスを左サイドで受けてペナルティエリアに侵入し、中央に駆け上がったコロ・ムアニにラストパスを送ろうとしたところを相手DFにカットされてしまったシーンだ。

 しかし以降、大きな見せ場はなく、後半は中盤でバランス取りに終始した。自身の有終と、グラスナー監督やアルマミ・トゥーレといった退団を決めている者のために得点を誓っていたが、それは叶わなかった。この悔いがなんらかの原動力になることに期待したい。

 5年間にわたるフランクフルト取材のなかで、鎌田の印象的な姿と言えば、やはり昨季のEL決勝だろう。120分を戦ってPK戦の末に勝利し、ピッチ上で人目もはばからず泣き崩れた。ロッカーでのセレブレーションなどを終えてミックスゾーンに登場した時はすでに深夜2時をまわっていたが、疲れも見せず心情を言葉にした。

「僕自身、あまり日の目を浴びず、難しいサッカー人生を過ごしてきたことを思い出して(泣いた)。やっぱり、本当にやり続けることは大事だなと思うんです。

 僕自身はどちらかと言うと、そういう星に生まれているというか、同じことをやってもまったく違う見られ方をする選手もいるし、どちらかというと僕は常にマイナスに見られていて、中学校の時も高校の時もそうだし、プロに入った時もそう。

 でもこれで(鎌田は)できないって思っている人たちを見返すことができたと思います。僕のサッカー人生で初めて報われた瞬間だと思うし、本当にうれしかったです」

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