ベンフィカがCL決勝トーナメントをかき回す可能性。黄金コンビと伝統の華麗な攻撃力は必見 (2ページ目)

  • 西部謙司●文 Nishibe Kenji
  • photo by Getty Images

【ベンフィカの伝統らしい華麗な攻撃力】

 監督はロジャー・シュミット。いわゆるラングニック派の監督で、レッドブル・ザルツブルクやレバークーゼンでは激烈なハイプレスで知られていた。しかし、ベンフィカではそこまで監督の色は出ていない。ある意味、オーソドックスすぎる4-2-3-1の運用はシュミット監督のチームとしては拍子抜けするぐらいなのだが、これが現在のシュミット流なのかもしれない。結果は出ている。

 ビルドアップは丁寧。GKからしっかり正確にボールを運ぶ。ただ、ベンフィカはもともとテクニカルでポゼッションのうまいチームなので、シュミット監督の手腕によるものかどうかは判然としないが、安定感のあるビルドアップは特徴の1つだ。

 攻め込みはラファとマリオを中心に、いわゆるティキ・タカの崩しができる。ショートパスをつないで相手を引きつけ、束にして置き去りにするような崩し。これもブラジルの影響を受けてきたポルトガルの伝統で、速い外回しの展開から強引なクロスボールが主流のヨーロッパのなかでは一線を画す存在になっている。

 ところが、ヨーロッパのなかのブラジルのようなベンフィカには、ブラジル人がいない。ネレスをはじめスカッドには何人かいるのだが、レギュラーメンバーの外国籍選手ではエンソ・フェルナンデス(チェルシーへ移籍)とニコラス・オタメンディのアルゼンチン代表2人が先日までの最大派閥だった。

 その他は右サイドバック(SB)アレクサンダー・バーがデンマークでアウルスネスがノルウェーと北欧の2人、左SBアレハンドロ・グリマルドがスペイン。GKがギリシャ人のオディッセアス・ヴラホディモスという構成。つまり、ベンフィカのブラジルっぽさはポルトガルらしさなのだ。

 ポルトガルリーグでは、昔からブラジル人選手が活躍してきた。ポルトガル語という共通言語もあって、ブラジルの選手にとって移籍しやすい国であり、ポルトガルリーグを足掛かりにビッグクラブへのし上がるという登竜門の役割を果たしてきた。

 名門ベンフィカにもブラジル人脈はあって、過去にはブラジル代表のバウドなどがプレーしているが、比較的ブラジル人選手の数は多くない。むしろアルゼンチン人脈のほうが強く、パブロ・アイマール、アンヘル・ディ・マリア、ハビエル・サビオラなどが活躍してきた。

 ライバルであるFCポルトの質実剛健なプレースタイルに対して、華麗な攻撃力のイメージがあるベンフィカだが、現在の会長であるマヌエル・ルイ・コスタやパウロ・ソウザ、ジョアン・ピントといったポルトガル選手がその伝統を築いてきたわけだ。

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