久保建英の挑戦はネクストステージに。ソシエダのリーダーの先に「ワールドクラス」の扉が待つ (3ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 中島大介●写真 photo by Nakashima Daisuke

【正念場となる今季の後半戦】

 今やシステム、ポジションは関係ない。久保自身がサッカーを生み出しているのだ。

 バジャドリード戦の前半10分、久保は右で起点を作って、マルティン・スビメンディに一度預けてからインサイドに入る。そこでロベルト・ナバーロにつけたボールのリターンを受けると、左へ流れてボールを持ち込んでいる。この時、立ちはだかった敵に一度は阻まれて瞬間的に五分五分のボールになったが、それを自分のものにして左足でシュートを打った。

「ボールに愛されている」

 一流選手を語るときに使う言葉だが、主のいないボールを不思議と自分のものにできる能力で、リオネル・メッシなどはその最たる選手だろう。相手ともつれながらも、自分のものにしてゴールを狙える。それは一種の"ギフト"だろう。

 久保の挑戦は次の段階に入った。扉の向こう側には「ワールドクラス」の称号がある。一流でも、クラッキ(名手)でも、言い方は何でも構わない。

 ただ、世界最高級の太鼓判を押されるには、チームを勝利に導くゴールにかかわる仕事をやり続けることが求められる。それは簡単なことではない。リーガはこれから後半戦で、チームは再開するヨーロッパリーグでもベスト16を決めているが、はたしてタイトルを獲れるか。

 2018年に、久保は1年足らずで驚くような進化を遂げている。FC東京であっさり定位置を奪うと、主力となり、優勝争いに引き上げ、日本代表にも選ばれた。電撃的にレアル・マドリードに移籍し、マジョルカでいきなり活躍してみせた。

 今季の後半戦も、もし久保が今のような進化を続けることができたら、新しい景色が広がっているだろう。

 2月13日、ラ・レアルは敵地でエスパニョールと一戦を交える。チームのやりくりが苦しいのは歴然としている。だからこそ、久保の真価が問われる。

プロフィール

  • 小宮良之

    小宮良之 (こみやよしゆき)

    スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。

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