メッシ「人生の大一番だった」。アルゼンチンがオランダ戦で見せた新しい顔とは? (3ページ目)

  • リカルド・セティオン●文 text by Ricardo Setyon
  • 利根川晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko

【オランダ戦で何かが変わった】

 しかし、準々決勝のオランダ戦で何かが変わった気がする。

 メッシは120分間、疲れることもなくプレーした。オランダに追いつかれても感情的にならず、冷静で、客観性を持ち、3秒先を読んでいた。あらためて、いるだけで試合を変えてしまう選手だということがよくわかった。

 この試合でアルゼンチンは今までにない力を得た。アルゼンチンは一時、敗退も覚悟したことだろう。同点に追いつかれ、PK戦まで進み、4人目のキッカーは失敗した。だが、そのことがメッシとその仲間たちに今までにない闘志を与えた。

 試合後、リオネル・スカローニ監督はこう言っていた。

「今日のアルゼンチンは新しい顔を見せてくれた。大きなプレッシャーにも耐えうるチームだということを教えてくれた。何が何でも勝つ。この勝利への大きな欲望は我々最大の武器だ。オランダには、そこまでしがみつくエネルギーがなかった」

 オランダは強いチームだった。ベスト4に値するチームだった。それを最後の最後まで戦い抜いて下したことは、メッシだけでなくチーム全体に自信を与えた。「レオのために」は変わらない。しかし、アルゼンチンはプラスアルファの力を得たのではないか。

 試合後のミックスゾーンで声をかけると、メッシは疲れているにもかかわらず、旧知の私のために立ち止まってくれ、今日の試合を語ってくれた。

「これは人生の大一番だった。もちろんすべての試合に価値はあるが、なかでもこれは特別だった。オランダは強かった。でも私たちは耐え抜く力を持っていた。最後のPK戦まで、決してあきらめず戦い抜いたチームメイトたちを誇りに思う」

 そしてこう締めくくった。

「アルゼンチンはメッシが一番重要だと言われるが、それはチームのみんなが支えてくれているからなんだ。どうかそのことを忘れないでほしい」

 W杯の記録でメッシがマラドーナを抜いたと言ったが、ひとつだけまだ追いついてないものがある。優勝回数だ。マラドーナ1、メッシ0。メッシが「神の子」から「神」になるのか。この大会にすべてがかかっている。

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