ウェールズに逆転勝利も、見えてしまったイングランドの「悲しい現実」 (3ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki photo by Hara Masashi

 思いもよらぬ形で先制した弱者が1−0で逃げ切るという試合。それは近年、めったにお目にかかれなくなっているものだ。1点リードしても、後ろで守ったら負け。そうした試合に頻繁に遭遇する。この試合も例外ではなかった。5−2−1−1−1でゴール前にへばりつくサッカーを見て、これは無理だと直感したが、ウェールズはそれでも90分間、1−1の状態を維持した。逃げ切り劇は決まりそうに見えた。

 理由は、イングランドの拙攻にある。ウェールズが思いっきり後方に引き、「さあどうぞ攻めてきてください」と言っているにもかかわらず、有効な攻撃を繰り出すことができない。

 イングランドは、後半頭から投入したジェイミー・バーディーが後半11分、こぼれ球を押し込み同点。ロスタイムにこれまた後半から投入したダニエル・スタリッジが逆転弾を決め、勝利をモノにした。貴重な勝ち点3を挙げ、決勝トーナメント進出に前進したが、先行きはとても心配だ。

 劇的な勝利だが、大喜びはできない。イングランドがかつてより強くなっていないことは確かだ。ジェラードはいない。ランパードもいない。テリーやスコールズもいない。相手のウェールズに存在するベイルのような、欧州のトップレベルで活躍できている選手が何より少ない。

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