名古屋グランパスが初勝利もJ2降格さえちらつく異常事態 稲垣祥「悪循環になってきたという印象は否めない」 (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki

 特に気になったのは、ハイプレスに迷いが見られたことだ。

 柏のゴールキック時に前からプレスをハメようとするも、誰がボールにアプローチし、誰がどうスライドしてハメきるのかがはっきりせず、プレスをはがされ、FWマテウス・サヴィオにドリブルで独走を許すシーンも見られた。

 これでは得意のカウンターにつなげるどころか、逆に失点のリスクを増大させることにもなりかねない。

 また、攻撃においても、3バックやボランチから効果的な配球がなされず、結果として相手DFラインの背後に大きく蹴るだけになってしまうことが多かった。

 長谷川監督も「我々の準備不足」と認め、「守備の構築だけでなく、攻撃の起点になるDFライン(の顔ぶれ)が(昨季とは)変わったのが大きかった」と話しているとおりだ。

 だが、名古屋の躓きは、それだけが原因だったわけではない。

「周りから見れば、『DFラインがこれだけ変わって厳しくなっているよね』と見られるのはわかるけど......」

 そう語るのは、ボランチを務めるMF稲垣祥である。

「キャンプ中の(練習)試合では、選手同士の関係性を含め、自分たちがやりたいことをいくつもできていて手応えはあった。それが、キャンプが終わったくらいからケガ人が出始め、メンバーが変わってやりたいことができなくなってきた」

 こうして迎えた、新シーズン開幕。「やることもちょっと現実的に変えて、というところで積み上げてきたものがなくなって、悪循環になってきたという印象は否めない」と、稲垣は苦しい胸の内を明かす。

 奇しくも名古屋は、昨季も同じJ1第4節で柏と敵地で対戦しているのだが、この時は3-0で勝利。内容的に見ても、FWキャスパー・ユンカー、FWマテウス・カストロ、永井の"トリデンテ"が、それぞれの能力と魅力を存分に見せつけての、実に鮮やかな快勝を収めている。

 結果的に昨季の名古屋は、夏の移籍でマテウスが去ったのをきっかけに急失速。結局は6位に終わってしまったわけだが、シーズン当初は13年ぶりの優勝をも期待させる戦いぶりを見せていたことは間違いない。

 翻(ひるがえ)って、1年後の今季である。

 客観的に見て、今季の名古屋が昨季から戦力ダウンしている事実は否定しようがない。DF中谷進之介、DF藤井陽也、DF森下龍矢ら、日本代表クラスがまとめて移籍してしまったのだから、その穴が簡単に埋まるはずがないのは当然のことでもある。

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