川崎フロンターレ、戦力拡充による「上昇度」は? 鬼木達監督のカリスマは蘇るか (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki

【ACL山東泰山戦の敗因】

 鬼木采配の中身も変化した。あるときまで確かに攻撃的サッカーだった。「1試合3点」(鬼木監督)を掲げて戦ったものだ。しかし昨季あたりから5バックで守りを固める守備的サッカーをしばしば取り入れている。ヴィッセル神戸と対戦した先のスーパーカップでも、終盤は5バックで守っている。日本代表の森保一監督的采配になっている。

 攻撃的サッカーの看板は下ろしたかに見える。よく言えば臨機応変、現実的な采配となる。それを森保監督は「賢くしたたかに」と表現しているが、いい意味での割り切りが消えた。哲学的ではなくなった。カリスマ性は低下した。ブレた、と言われても仕方がないだろう。欧州的に言えば、これぞ監督交代のタイミングなのだ。

 神戸戦では、5バックへ変更したのを機に流れは一転、相手ペースになった。メンバーチェンジの話をすれば、後半のアディショナルタイムに逆転弾を浴びた直近のACL山東泰山戦でも、終盤の選手交代を機に流れはいっそう悪くなった。敗因のひとつに挙げたくなる。鬼木監督の監督力は2021年あたりをピークに下降線を辿っているかに見える。

 昨季の8位より順位は大きく上がるだろう。焦点はその上昇度だ。優勝まで届くか否か。

 昨季との一番の違いはCFだ。ケガなどでリーグ戦出場12試合にとどまったレアンドロ・ダミアンを放出し、エリソンを獲得。得点源として期待できそうな存在感を抱かせる。浮沈のカギを握る一番の選手と言って過言ではない。だが山東泰山戦に話を戻せば、相手の1トップ、クリサンのほうがスケール的に上だった。もっと言えば、出場した外国人選手の質こそが、この試合を分けたポイントでもあった。山東泰山戦はつまり、Jリーグのレベルを推し量る上で重要な試合に映った。

 昨季優勝争いを繰り広げたヴィッセル神戸、横浜F・マリノスは今季、特段大きな補強はしていない。エリソンが活躍すれば、川崎と上位との差は接近するだろう。あるいは逆転の目もあると見るが、それは一方でJリーグの停滞を意味するとの見方もできる。山東泰山の外国人選手は、そういう意味で眩しく見えた。

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