アビスパ福岡にあって、浦和レッズになかったモノ「選手たちが恥ずかしがらず、いいものを表現ができた」 (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki

 スコルジャ監督曰く、「我々の強みは堅い守り」。にもかかわらず、前半に2点も失ってしまっては、思いもよらぬ出来事だったと言うしかない。

 もちろん、福岡の視点に立てば、それは惨事どころか、クラブ史に残る歓喜の瞬間だったわけだが、いずれにしても大方の予想を覆す結果だったことは確かだろう。

 では、なぜ福岡は戦前の予想を覆し、ルヴァンカップ初優勝を手にすることができたのか。

 その要因について語った両チーム指揮官の言葉が、不思議なほど符合していたことは興味深い。

「先制されたあとはボールをキープしながら流れを変えようとトライしたが、ナーバスになってしまった。ハーフタイムで交代するなど対策しようと思っていたところで、前半終了間際にまた失点。2点差を追いつくのは大変な作業だった」

 そう語るスコルジャ監督が、より重く受け止めていたのが、立ち上がりの1失点目。「決勝戦の立ち上がり5分で失点しまうのは、試合前の"メンタルの準備で何かが間違っていた"のだと思う」と、Disasterに至った理由を口にした。

 一方、福岡の長谷部茂利監督が勝因として挙げたのもまた、メンタルの準備である。

「スタッフを含めて、選手たちがこの一戦にかける思いを恥ずかしがらず(に表現して)、泥臭く、自分たちができることをすべてやり尽くして、このゲームに挑んでいる。気持ちとか、心がつかさどるものは目に見えないが、そういうところで今日は"いい準備"ができて、いいものを表現できたと思う」

 しかも、福岡にとっては、これが1996年のJリーグ参入以来28年目にして手にする初タイトル。つまり、試合前の福岡は、優勝とはどういうものかを知らないチームだったということである。

 だからこそ、メンタル面でいい準備をし、強い気持ちで臨むことが必要だ。長谷部監督は、そう考えていた。

「いずれ(タイトルが)獲れると思っているクラブがあると思うが、それでは獲れない。我々には今回こういうチャンスが来て、クラブ一丸となって獲るんだという意気込みで乗り込んできた。

 歴史のなかでアビスパは、J1の3大タイトルを獲れていなかったので、今日獲れずにまた、何年もずっと獲れないチームになるか。ここで獲ってまた来年も、そしてこれからも(ずっと)獲るんだというチームになるか、の瀬戸際だったと思う」

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