Jリーグ序盤戦で目を引くブレイク候補5人「下位チームで孤軍奮闘」「縦に運ぶ力はA代表より上」「外国人選手が嫌がりそうな小兵」... (3ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by J.LEAGUE/J.LEAGUE via Getty Images

 シーズンの頭から4-3-3で戦うのは、長いクラブ史において初めてではないか。とすれば、アンカーはクラブ史上初めて正式に誕生したポジションになる。

 その栄えある初代アンカーに抜擢された佐野。今季、FC町田ゼルビアからやってきた22歳だ。サイドの高い位置に飛び出し、ゴール前に折り返すプレーも当たり前のようにこなす。遠藤航でも、守田英正でも、田中碧でもないタイプ。近い将来、日本代表に選ばれてもおかしくない、旬な勢いを感じさせる若手だ。

 鹿島には布陣的な構造上、伝統的にアンカーに加えて、ウイングらしいウイングも存在しなかった。今季、サンフレッチェ広島からやってきた藤井は、鹿島が4-3-3を採用するために獲得した選手だと推察できる。"ハマり役"とはこのことを指す。

 藤井にとっても、ウイングというポジションが存在しなかった広島でプレーするより、もっと高い位置で攻撃に専念できる鹿島のほうが楽しいはずだ。実際、その喜びが現在のプレーぶりから見て取れる。

 右利きの右ウイングと言えば、藤井とポジションを争うU-22代表の松村優太、そして日本代表の伊東純也を想起するが、絶対数は少ない。右利きの選手にとって、右サイドを縦に抜くプレーは難易度が高いからだ。

 一番に求められる不可欠な要素がスピードであることは、伊東を見ればよくわかる。もちろん、藤井の武器もスピードだ。

 右ウイングというポジションに就いて間もないだけに、伸びしろはあると見るが、その一方で、藤井は左ウイングもこなす。第3節(3月4日)の横浜FC戦では、後半から左に回り、縦へ進んでもよし、内へ切れ込んでもよし、という多角的なプレーを披露した。まだ底が割れていない魅力を秘めた24歳である。

 最後の5人目は横浜F・マリノスの渡辺皓太だ。

 昨季MVPの岩田智輝が抜けた穴を埋める一番手は、当初21歳の藤田譲瑠チマかと思われた。だが蓋を開ければ、24歳の渡辺が中盤で5試合フルタイム出場を続けている。先発が全試合のおよそ半分だった昨季と比較すれば、チーム内のポジションが大きく上昇したことが明白になる。

 中盤を所狭しと駆け回る活動量命のMFだが、これまではミスも少なくなかった。安定感に若干乏しかったが、今季はこれまでよりずいぶん安定して見える。彼もまた、現日本代表には存在しないタイプのMFだ。何より外国人選手が嫌がりそうな165cmの小兵である。どこまで通用するか、国際試合で見てみたい選手である。

3 / 3

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る