ジーコが振り返る今季の鹿島アントラーズ。「ベンチの混乱がプレーに影響を与えていた」 (2ページ目)

  • リカルド・セティオン●文 text by Ricardo Setyon
  • 利根川晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko

チームにはレベルの高い監督が必要だ

 私自身は南米かヨーロッパかということにはこだわらない。現在の仕事ぶりを見て評価する。その点でレネはすばらしく、プロフェッショナルであり、いい選択であったと思う。

 後任で現在、指揮を執る岩政大樹監督。彼は優秀な選手だったし、チームのキャプテンでもあった。ただし、これまでトップチームのベンチに座ったことはない。レネ監督のアシスタントというのは彼がキャリアを始めるうえでちょうどいいものだったろう。

 しかし、ここで予想しなかったアクシデントが起こる。新型コロナウイルスによる入国制限のせいでプレシーズンの時期にレネが日本に入国できなかったのだ。そのためこの時期、コーチだった岩政はひとりでチームを率いなければならなかった。

 やっとレネ監督が日本に来られた時、レネは2人のアシスタントを連れてきていた。このことは多少の混乱をもたらした。それまでチームを率いていた人間が、急にテクニカルスタッフのなかでも指導権を失ってしまったからだ。

 その後、レネ監督はさまざまな問題に直面し、最後には解任された。もちろん彼の2人のアシスタントも一緒だ。こうしてチームを知る人間は、プレシーズンに指導をした岩政新監督だけとなってしまった。こうしたベンチの混乱は、ピッチでのプレーにも影響を及ぼした。

 リーグで優勝が狙えなくなってからは、唯一の希望は天皇杯だった。アシスタントから昇格した岩政監督はよくやり、チームを準決勝にまで導いた。我々はいい仕事をしているという確信があったし、天皇杯を制して、シーズンを救う自信はあった。

 だが多くの問題と、チーム周辺の緊張した空気が、別の結果をもたらしてしまった。我々はJ2でも18位のチームに敗れてしまったのだ。我々は彼らに勝つべきだったし、決勝に駒を進めるべきだった。J2のチームにホームで敗れることは、チームにとってはとんでもないことだった。サポーターに唯一の喜びを与えるチャンスを棒に振ってしまった。
 
 鹿島には優秀でレベルの高い監督が必要だ。暫定的に監督を任命することなどあってはならない。国籍は関係ないが、すでに監督として一定の結果を出している者がベンチに座るべきだ。チームは本物の監督を持たなくてはいけない。

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