フットサル日本代表のエースが振り返る、初戦敗戦からの逆転アジア制覇。「あらためて壮絶な大会だった」 (3ページ目)

  • 河合拓●取材・文・写真
  • text&photo by Kawai Taku

苦しい連戦からの成功体験

 優勝を喜ぶ清水だが、さらなる成長へのヒントも得られたようだ。

「勝てたことも大きいですが、何ができて、何ができなかったかを冷静に分析していけば、また選手としてグッと上がっていけると思います。各々がよい課題を持ち帰れました。自分の課題で言えば、スコアの面に関して波がありました。その波を一定にできるように、セットプレーやカウンターの部分でも仕留めきる。日頃のリーグ戦から、得点を取る選手にならないといけません。

 また、代表で得たやり方をここから先に成熟させていかないといけないなかで、次までに頭をもっとクリアにして、成功体験をピッチ上でスムーズに出せる作業を取り入れていきたい」

 清水が言うように、今大会で日本が得られた経験値は非常に大きい。例えば、大会初戦でサウジアラビアと対戦したが、過去にアジア杯で一度も勝利を挙げたことがなかった相手に日本は1-2で敗れた。

初戦敗戦からの優勝で大きな経験値を得たフットサル日本代表初戦敗戦からの優勝で大きな経験値を得たフットサル日本代表この記事に関連する写真を見る「自分たちで苦しい試合にしてしまった。決めきるべきところで決めきれず、相手のGKを使った攻撃も対策はしていたのですが、失点してしまった。対策を練っていてもすべてを防ぎきることはできなかったし、負けるべくして負けた印象が強かった」と、清水は振り返ったが、この日の夜には選手が集まってミーティングが行なわれている。

 8年前の優勝を経験していた吉川智貴(名古屋オーシャンズ)と内村俊太(湘南ベルマーレ)が、チームの雰囲気を変える必要があると感じ取り選手たちを集めたのだった。

「仲間を励まさないといけない時に『あのパスミスが...』というように、どうしてもミスを指摘するような雰囲気になってしまっていて、あまりよくなかった。ピッチ上で起きたことは、ピッチ上で返さないといけないのに、自分自身も焦りを感じていたし、嫌なところが重なるゲームになってしまった」と清水。

 ミーティングの際には「技術的な話をするよりは、戦い方、気持ちのこと。『みんなで助け合い、誰かができないなら自分が助けてあげる"プラスワン"を出していこう』と話しました」と、一人ひとりが腹を割って話したなかで、チームメートたちに伝えたことを明かした。

 チーム状況が良い時は、多くのことをする必要はない。だが、悪い時にどうすればいいのかを多くの選手たちが経験できたのは大きな財産だ。8年前のベトナム大会では若手だった吉川と内村も、グループリーグ2戦目のウズベキスタン戦で敗れた経験があり、それが今回の行動につながった。今後、苦しい状況になった時には、チームを修正できる選手がこのチームからきっと出てくるはずだ。

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