フットサル日本代表のエースが振り返る、初戦敗戦からの逆転アジア制覇。「あらためて壮絶な大会だった」 (2ページ目)

  • 河合拓●取材・文・写真
  • text&photo by Kawai Taku

強豪イランを破ってアジア王者に

 もう一つのゴールが生まれたのは、決勝のイラン戦だった。イランは過去15回あったこのアジアカップで12回優勝。昨年のフットサルワールドカップでもベスト8に入った強豪だ(日本はベスト16)。

 第1ピリオドの15分に先制点を許した日本だったが、その直後にGK黒本ギレルメ(立川アスレティックFC)のロングボールからチャンスを作る。清水をマークしていた相手がボールの処理をミス。流れてきたボールをコントロールした清水が、冷静にゴールネットを揺らして同点に追いついた。

「あのシーンは、イメージとは全然違いました。黒本さんから直接、僕にボールが来ると思っていなかったんです。ロングボールが出た時、相手が一瞬早く前に出たので『先を越された』感覚でした。ただ、その時に相手に体をぶつけることができたんです。それによって、彼がイメージしていたボールへの到達点と、少しズレた部分があったと思います」

 ロングボールに反応した相手は、清水に体を寄せられて思い描いたコントロールができなくなり、ボールを後ろにこぼす形となった。こぼれ球に即座に反応した清水は、相手が戻ってくる前に右足を振り抜く。ボールはシュートコースを消しに前に出てきたGKの脇を抜き、ゴールに決まった。

「体を当てた時は、『ここにボールが落ちる』とは思わなかったですね。クリアミスを誘発してマイボールにできたらいいという感覚でした。ボールが転がった時には、事前情報でGKが(前に)ブロックしに来るのはわかっていたので、顔の横にボールを蹴ることができれば入るなと思っていました。それよりは低くなったのですが、すり抜けて入ってくれたのでよかったです。ボールが落ちてからは、勝手に体が反応した感じでしたが、スムーズでしたね。パーンと落ちて、クルッと反転させて、あとは打つだけだったので」

 準々決勝のインドネシア戦(3-2)、準決勝のウズベキスタン戦(2-1)と先制されながらも二度の逆転勝利を収めていた日本は、このエースの一撃で乗った。一方、これまでにリードされてから追いつかれることのなかったイランは、これまでとは異なる試合展開に焦燥感が出始める。

 第2ピリオド、日本はオリベイラ・アルトゥール(名古屋オーシャンズ)の直接FKでリードを広げると、試合終盤にはイランのパワープレーに耐えてオウンゴールを誘発。残り1秒でゴールを決められたが、3-2で逃げきってアジア王者に返り咲いた。

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