「弱者のサッカーに徹した」ガンバ大阪の執念。エース宇佐美貴史は語る「死ぬ気でがんばりたい」 (2ページ目)

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

復帰した宇佐美が大仕事

「マリノスがいいサッカーをするチームなのはわかっていたので、自分たちは弱者のサッカーに徹した。ボールを持てるとは思えなかったし、シュート数もボール支配率でも上回れるとは思えなかった。粘り強く守り続けて、セットプレーやカウンター1発で取れればと。不本意ではありますけど、イメージどおりの試合でした」

 そう振り返ったのは、宇佐美貴史である。

 開幕直後に右アキレス腱断裂の大ケガを負い、前節に復帰したばかりのG大阪のエースは、この日はキャプテンマークを巻いてピッチに立っていた。

 圧巻のドリブルとシュート力を備えたアタッカーにとって、「弱者の戦い」はストレスの溜まるものだったに違いない。

 それでも、相手のボールを必死に追いかけ、限られたプレー機会では孤立無援の状況のなかでも確実にボールを収め、次のエリアと展開する。なにより質の高いプレースキックを、結果的にふたつのゴールに結びつけたのである。

 セットプレーで先制し、守りを固め、リスクを冒して攻めてきた相手の隙を突いて、追加点を狙う----。実力上位チームに挑む際の常套手段が、これほどまでにハマる試合も稀有だろう。その意味で、G大阪は完璧な戦いを演じたのである。

 次々に際どいシュートを防いだ守護神の東口順昭がこの試合のマン・オブ・ザ・マッチにふさわしいが、ケガ明けながら志願のフル出場で90分間走り続けた宇佐美もまた勝利の立役者だった。

 もっとも、首位チームを撃破して価値ある勝ち点3を手にしたG大阪だったが、ヴィッセル神戸、湘南ベルマーレ、アビスパ福岡と残留を争うライバルチームも揃って勝利を収めたことで、17位からひとつ順位を上げるにとどまった。降格圏から抜け出したとはいえ、いまだ苦しい状況であることに変わりはない。

 守備の奮闘があった一方で、セットプレー頼みの戦いでは限界があるだろう。守備を意識しながらも、いかに攻撃に打って出られるかが、残り2試合のG大阪に求められる重要なテーマとなる。

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