中村憲剛と佐藤寿人がリーダーに必要なものを力説。「自分に甘いキャプテンの話なんて、誰も耳を傾けない」 (6ページ目)

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki 佐々木麻里子●ヘア&メイク Hair & Make up by Sasaki Mariko

中村 サポーターの応援が力になる、後押しになるとよくコメントしていたのですが、そういうことなんですよ。ちょっとリーダー論からは話が逸れているんですけど、結局大事なのは人と熱量。

 リーダーがそれを前面に出せるような人だと、名古屋で寿人がやったように一体感が生まれてくる。だからいい組織になっていくためには、やっぱりリーダーが大事なんですよね。

---- アプローチこそ違えども、ドゥンガが怒るのもそういうことですよね。

中村 絶対に正しいというリーダー像はないと思うんです。それぞれ個性も性格も含め、背景が全員違いますから。だけどいい組織には、その組織のことを毎日考えて全力で行動し、かつ周りを巻き込める熱量をもったリーダーがいるということは、ひとつ間違いないポイントだと思います。

佐藤 どれだけの熱量を組織に向けられるかですよね。結局、個人じゃないですか。もちろん個人の利益を求めたいけど、組織として成果を上げることに熱を持って振る舞えるか。そこは、リーダーとして大事な要素ですよね。

中村 普通に考えれば、自分が自分のできる範囲でその組織をよくしていきたいと思うことは、籍を置いている以上、当たり前の願望ではないのかなと思います。

---- つまりキャプテンシーとは、熱量の大きさによって育まれるものだと。

中村 そこがないと、やっぱり人は動かないですよね。本気じゃなければ動かない。これはサッカーだけじゃなく、社会でもそうだと思います。

 この組織のために本気でやろうとしている人には、みんなついていくと思うんですよ。ドゥンガや(柱谷)哲二さんのように目に見えるものもそうですし、内に秘めたものでもいい。熱さというのは確実に人に伝わっていくんですよね。

佐藤 あとは、いい意味でプライドを持たないことも大事ですね。プライドがあると、人の話を聞くことが難しいじゃないですか。でも、それも取っ払えると、いろんな人の話に耳を傾けられる。人の声を聞くというのも、リーダーには必要なものだと思います。

中村 たしかに。自分も、自分が思っていることだけを伝えるのではなく、周りがどう思っているかを聞いたうえで、自分の考えを伝え、互いの考えを擦り合わせるようにしていましたね。

(後編につづく)

【profile】
中村憲剛(なかむら・けんご)
1980年10月31日生まれ、東京都小平市出身。久留米高校から中央大学に進学し、2003年にテスト生として参加していた川崎フロンターレに入団。2020年に現役を引退するまで移籍することなく18年間チームひと筋でプレーし、川崎に3度のJ1優勝(2017年、2018年、2020年)をもたらすなど黄金時代を築く。2016年にはJリーグ最優秀選手賞を受賞。日本代表・通算68試合6得点。ポジション=MF。身長175cm、体重65kg。

佐藤寿人(さとう・ひさと)
1982年3月12日生まれ、埼玉県春日部市出身。兄・勇人とそろってジェフユナイテッド市原(現・千葉)ジュニアユースに入団し、ユースを経て2000年にトップ昇格。その後、セレッソ大阪→ベガルタ仙台でプレーし、2005年から12年間サンフレッチェ広島に在籍。2012年にはJリーグMVPに輝く。2017年に名古屋グランパス、2019年に古巣のジェフ千葉に移籍し、2020年に現役を引退。Jリーグ通算220得点は歴代1位。日本代表・通算31試合4得点。ポジション=FW。身長170cm、体重71kg。

6 / 6

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る