アルシンドが語るJリーグ黎明期と外国人選手としての誇り。「未来に向けて投資をしている自覚があった」

  • リカルド・セティオン●文 text by Ricardo Setyon
  • 利根川晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko

Jリーグ2022開幕特集
アルシンドインタビュー(3)

 現在の日本のサッカーは非常にレベルが高く、Jリーグは本物のプロリーグとなった。そしてたぶん、世界でも有数の非常によく組織されたリーグだと思う。プレーのクオリティーから言えばトップクラスではないかもしれないが、そのプロフェッショナリズムは世界のお手本になるものだ。

 その世界に誇れるリーグの黎明期に、私たちは日本にいた。我々の時代には、それぞれのチームに必ず数人の外国人選手がいて、リーダーとして大きな役割を果たしていた。今思い返しても、リーグのトップの人たちは本当にうまいやり方を考えたものだと思う。

 外国人選手たちはみな重要な存在で、有名で、なにより前向きだった。ピッチでいいプレーを見せるだけではなく、ピッチの外でも役割を担っていることを十分にわかっていた。我々は大使であり、日本のリーグを作りあげるエンジニアであり、建築家だった。世界では日本にプロサッカーが生まれるなんて信じてもいなかったが、私たち当時の外国人選手は、できる限り多くのことを日本に伝えようとした。

 プロフェッショナルとは、自分のキャリアのためだけに生きる者ではない。我々にはひとつの大きな目的があった。自分たちは未来に向けて投資をしているのだという自覚があった。今、自分たちがすることが、将来何万人という子供たちの人生を変えていくのだと信じていた。

 今のJリーグには、昔ほど多くのスター選手はいない。しかし、もっと本物で内容のあるものになってきている。もう外国のスターを必要とせず、W杯などで日本の選手たちがレベルの高いサッカーをしているのを見ると、自分たちの仕事が実を結んだのだと、うれしくなる。

鹿島アントラーズで2年を過ごした後、ヴェルディ川崎に移籍したアルシンド photo by Yamazoe Toshio鹿島アントラーズで2年を過ごした後、ヴェルディ川崎に移籍したアルシンド photo by Yamazoe Toshioこの記事に関連する写真を見る ただひとつ、クラブレベルにおいては、ちょっと物足りなさを感じることがある。というのも、あまり大きな投資がなされていない気がするのだ。たとえば東京ヴェルディ。今の姿はちょっと昔からは想像できない。Jリーグのスター軍団だったチームが、最近はずっと2部にいることは、私には受け入れがたい事実だ。

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