U-23日本代表がA代表では実現できていないことを実践し、パリ五輪出場へ一歩前進 (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki

 日本が試合のなかで唯一バタバタと落ちつかない戦いを見せたのは、UAEが長身のセンターフォワードを生かしたロングボールで日本陣内に攻め入ってきた、立ち上がりの5分程度だっただろう。

「(UAEの戦い方を)スカウティングもしていたし、予想どおりではあったので、チームとして面食らったというよりは、僕個人のところでもっと(ヘディングで)勝てなきゃダメだよねっていう感じ」とは、センターバックを務めた木村。しかし、完全に競り勝てないまでも、時間とともに体をぶつけて競り合えるようになると、UAEはたちまちおとなしくなった。

 木村とセンターバックでコンビを組んだ鈴木が語る。

「(ロングボール)一発でやられるのが怖さでもあるので、そこは絶対にやらせない気持ちでいた。(誰かがヘディングで)負けても全員でカバーする意識でやれていたので、大きな不安はなかった」

 とはいえ、90分のなかでは、試合の流れが大きく変わりかねない事態にも何度か見舞われている。前半なかばで先制するも、なかなか追加点を奪えなかった日本は、その間、PKの判定がノーファールに、ゴールの判定がオフサイドに、いずれもVARによって日本の得点(得点機)が取り消されたのである。

 それでも、日本の選手たちは「(VARの判定を待つ間も)全員で『これが取り消されてもリードしているから大丈夫だよ』という声かけができていたので、それほど慌てることはなかった」(鈴木)。

 UAEを勢いづかせることがなかったのは、日本の選手たちが決して気持ちをきらすことなく、戦い続けた結果である。

 初戦の中国戦では、前半17分にしてDF西尾隆矢が退場となり、アディショナルタイムも含めれば、ほぼ90分間を10人で戦う非常事態に陥った。ピッチに立っていた選手には、通常の1試合分以上の疲労が蓄積していたとしても不思議ではない。

 だが、2戦目で大きく先発メンバーを入れ替えてもなお、新たな顔ぶれが緊張する様子も見せず、ピッチ上で頼もしいばかりのプレーを披露した。

「(ポジション的に)近い距離感の佐藤(恵允)選手、荒木(遼太郎)選手とは、練習での紅白戦からうまく連係がとれていた」とは、この試合が初先発、初出場だった左サイドバックの大畑歩夢である。

「誰が出ても勝つ。誰と組んでも機能する」とは、A代表の森保一監督が口にする言葉だが、それを実現するのは簡単なことではない。ところが、U-23日本代表の面々は、パリ五輪出場がかかった大舞台で、それをピッチ上で実践して見せているのである。

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