なでしこジャパンの守護神・山下杏也加が苦しんでいた「最悪の選択」 8カ月前の悪夢からW杯までどう立ち直ってきたのか (3ページ目)

  • 早草紀子●取材・文・撮影 text&photo by Hayakusa Noriko

 開幕時、現地で日本を注目国に挙げる人やメディアはいなかった。このワールドカップ開催がオーストラリアでは大盛況とのニュースを目にするも、正直ニュージーランドでの盛りあがりはイマイチだった。そんな環境をなでしこジャパンが一変させた。決勝トーナメントに入って以降、街を歩けば「GO!JAPAN!」と声をかけられる。ラグビー映像しか流さなかったスポーツバーでワールドカップのライブ映像が流れ、「サッカーもいいもんだね」と帰っていく客の表情は誰もが楽しそうだった。

 日本の献身的な守備だけでなく、中堅選手のプライド、若手の奮闘などが促され、他にはない"なでしこのサッカー"が紡がれた今大会。ここからの女子サッカーの道のりを明るく照らすワールドカップの戦いだった。

 そして、GKとして最後まで味方を鼓舞し続けた山下も得るものがあった。

「今までのサッカー人生で聞いたことがない(声援だった)。もう1回この舞台に戻りたいと思わせてくれました」

 4年という月日は選手たちにとって長いものかもしれないが、再びワールドカップの舞台で戦う山下の姿を見たい。

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