「日本の罠にはまった」...スペインの名将がなでしこジャパンを大絶賛「選手たちは何をすべきかの確信に満ちていた」 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 早草紀子●撮影 photo by Hayakusa Noriko

【スペインが犯した戦術的ミス】

 12分の先制点は、その賜物と言えるだろう。左サイドに幅を取っていた遠藤純へ、バックラインからパス。瞬間、2人のアタッカーがスペインのハイラインと駆け引きしながら裏に走り、そこへボールが出る。これは彼女たちが用意した点の取り方だったはずで、枚数は揃っていたスペインの守備を見事に無効化した。

 それぞれが、数的優位よりも、ポジション的優位を取っていた点は特筆に値する。とりわけ、3-4-2-1(5-4-1)の各ラインは距離感をコンパクトに保っていた。そのおかげで危険なボールを入れさせず、ミスを誘って押しつぶし、守から攻に切り替えられた。

ミケル・エチャリがプレスの質の高さを激賞していた植木理子ミケル・エチャリがプレスの質の高さを激賞していた植木理子この記事に関連する写真を見る トップに入った植木理子のプレスは、とても質が高かった。常にどちらかにコースを限定し、守備のスイッチになっていた。また、長野風花、林穂之香の2人はとにかく裏を簡単に狙うパスを阻止。同時に宮澤ひなた、猶本光の二人は集中力を高め、サイドからカウンターを準備していた。攻守一体だったことで、攻められながらも、主導権を失わなかった。

 29分、40分の追加点は、まさに典型だろう。敵を誘い込んでの守備でパスカットし、一気のカウンター。植木だけでなく、宮澤もストライカー的性格を持ち、よく決めきった」

 エチャリはかつてエイバルを率いていた時代、5-4-1という守備戦術の使い手のひとりだった。それだけに弱点も知っていた。

「一方、スペインは戦術的ミスを犯していた。前線で激しく守り、リトリートして整然と守る日本に対し、目先を変える攻撃が必要だった。

 たとえばパスの方向が一定になりすぎていた。サイドチェンジを含め、相手の守りの裏をかくようなトライをすべきだった。ポゼッション重視のプレースタイルはわかるが、ショートパスに固執せず、縦への速い攻撃も狙うべきだっただろう。あえて長いボールを入れ、敵陣深くに押し込んで守備をさせ、攻撃に転じるという変化が足りなかった。攻守で日本に余裕を与えてしまっていた。これでは、いくらボールを保持していてもプレーが読まれてしまい、守備戦術の沼にはまってしまうのだ。

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