ナイジェリアに連勝。2013年最終戦で示したなでしこの方向性 (2ページ目)

  • 早草紀子●文・写真 text&photo by Hayakusa Noriko

 その反面、守備では背後を取られるシーンもしばしばみられた。これは危ない。フィニッシュの精度に欠けていたナイジェリアが相手だったから大事には至らなかったが、これがドイツ、アメリカ、フランスあたりならばもれなく失点だ。こればかりは実戦を積むしかなく、上野にとって大きな壁となるだろうが、まだ18歳。打開策を見つけるには十分に時間がある。今はまだなでしこの新芽といったところだが、楽しみな人材であることは間違いない。

 2013年、なでしこジャパンの成績は12戦5勝4敗3分。「負けてはいけない相手に負けたり、勝ち切れなかったことは反省」とした佐々木監督の言葉通り、確かに数字的には芳しくない。が、この数字こそが「若手のつもりでまず自分が変わる」とした宮間や、「もどかしさを感じる」大野、「イメージが合わないとかいう以前の問題」と苦い表情を残した大儀見らの、チーム全員に伝えようと発信する危機感につながっている。

 この一年、できなかったことばかりではないが、歯車が狂ったまま走り続けてしまったために、数字も悪ければ、内容も納得できるものが少なかった。だからこそ、なでしこたちは変わろうとしている。

 もし、内容と反して結果が出てしまっていたら、まだしばらく暗闇をさまよっていたかもしれない。6月のヨーロッパ遠征、東アジアカップで打ちのめされた宮間はこれまでの数カ月間の自身をこう振り返った。

「もちろん個でもそうだけど、限られたスペースをどうかいくぐるか。個だけではやりきれないところもあるのに、周りに働きかけることをしないで自分ひとりで解決しようとしてた」

 それをチームの取り組むべきこととして取り入れたのが今回のナイジェリアとの2連戦だった。長崎では、澤穂希、近賀ゆかりの復帰で追い風が吹いた。無理をして埋めていた隙間を、言葉を交わさずともスーッと埋めてくれる。それは、若手を引き上げようともがき続けた宮間ら中堅選手たちに頼もしく映った。頼りきるつもりはないが、確実に肩に乗せていた荷が軽くなった。そして進むべき道、その進み方が見えてきたようだ。ようやくスタートラインに立った。

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