尾花高夫は斉藤和巳のピッチングを見て「コイツをエースにできなかったら指導者失格」と惚れ込んだ (2ページ目)

  • 水道博●文 text by Suido Hiroshi

── 2003年20勝3敗、2005年16勝1敗、2006年18勝5敗など、驚異的な勝率を誇りました。

尾花 192センチの長身から投げ下ろすストレート、フォーク、カーブ、スライダーという武器を持っていました。先述したように、ワンポイントアドバイスを斉藤本人や捕手の城島健司に伝えました。そして斉藤には"度胸"があった。強いハートを持っているのも、好投手の条件です。

【テスト生の投手を新人王に】

── 2番目は誰を挙げますか。

尾花 山口鉄也(巨人)です。私が巨人のコーチに就任した直後の2006年秋、左のリリーフ投手育成が最重要課題でした。候補は5、6人いましたが、目を引いたのは山口の"心がけ"でした。ブルペンにロジンバックがないと、山口が用意している。そうした細やかな性格は、投球にも役立ちます。当時は育成選手で最速138キロ。上体が前に突っ込むクセを修正すれば、球速が5キロアップする確信があったので、清武英利球団代表にお願いして、支配下登録にしてもらいました。

── 印象に残っているシーンはありますか。

尾花 2007年5月9日の阪神戦でのリリーフの場面です。原辰徳監督に「ここで山口を投げさせるのですか?」と聞かれたのですが、「僅差でもメンタルを見ておきたいのでお願いします」と。結果は1回無失点。直後の攻撃で二岡智宏が藤川球児から逆転本塁打を放って、山口は育成出身投手初の勝利投手になったのです。投手にとって"勝ち星"は重要です。これで自信をつけた山口は、2008年に11勝23ホールドで新人王。メンタルが弱いと言われていて、登板する時も「こんな場面、絶対無理です!」と言いながら、開き直って抑えてしまう。それが山口の強みでした。

── 育成出身ながら、推定年俸は3億円を超えました。

尾花 9年連続60試合登板を果たすなど、チームにとって欠くことのできない投手でした。育ってくれてうれしいですね。

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