ヤクルト沼田翔平が「シーズンを捨てたから毎日のようにできた」と体力強化 支配下登録へ「一度クビになった人間...性格悪くいきたい」 (2ページ目)

  • 島村誠也●文 text by Shimamura Seiya

 前述したアメリカンノックは、通常は10球捕りをインターバル1分で3セット行なうのだが、沼田は「ほかの選手と同じではダメだ」と、インターバルを30秒と短くし、5セットに増やした。

「正直、5セットはやりたくないですよ、つらいですし。でも尾花さんに『しんどいことから逃げてきたことのツケが回ってきているんだぞ』と言われたことが、すごく胸に刺さったんです。ここでまた逃げて、変わらなかったらダメじゃないかと」

 灼熱の7月、8月になっても、ほぼ毎日のようにアメリカンノックは続いた。

「言葉は悪いですが、シーズンを捨てたから毎日のようにできたんです」

 衝撃的ともとれるこの言葉の真意を、沼田が説明する。

「もちろん、根っこの部分では絶対に捨ててないですよ。でも力足らずなことを考えると、待たなきゃいけない部分があった。焦ったところで、結果が出せる内容ではなかったですし、そこは割り切りました。ボールの強さであったり、能力を上げていくには、追い込む練習をしないといけません。試合で投げながらそれを続けるというのは、シーズンを捨ててない人には難しいことなので」

 この信念を貫けたのは、ジャイアンツ時代に鍵谷陽平、田中豊樹、野上亮磨といった先輩たちからの助言を思い返したからだという。

「なかなか支配下になれなかった時や、再び育成になった時に『見ている人は絶対に見ているから。腐らずにしっかりやりきりなさい』と。そこでやめていたら、ヤクルトにも拾ってもらえなかったかもしれません。その言葉があったから、昨年7月の支配下登録の期限が過ぎても、落ち込むことなく続けることができました」

【オフにヤクルトと育成再契約】

 その成果は着実に表れ、夏頃から沼田のピッチングは投げるたびに安定感が増していった。9月は4試合に先発し、3試合連続でクオリティースタート(6回を投げて自責点3以内)を達成。スタミナが強化されるとともに、体の強さも実感し技術的にも向上した。

「あれだけ練習をして、体に刺激が入ったことで『こういうボールを投げられたら』と思っていたことが、だんだん形になってきたんです。たとえ技術があったとしても、体ができていなかったら再現できないこともありますので」

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