プロ野球の歴代内野手で「グラブさばきが」が一番うまかったのは誰か 高木豊が参考にしていた選手などを挙げた (4ページ目)

  • 浜田哲男●取材・文 text by Hamada Tetsuo
  • photo by Sankei Visual

【天才に教えられた守備の心構え】

――ピッチャーはいかがですか?

高木 桑田真澄(元巨人など/投手)です。彼なら二遊間も守れたでしょう。グラブさばきはもちろん、ハンドリングも柔らかいですし、打球に対する反応も抜群でした。斎藤雅樹(元巨人/投手)もそうでしたね。

――ちなみに、桑田さんと対戦した時にセーフティーバントを試みたことはありますか?

高木 桑田が投げている時はやらなかったです。確か、送りバントもしたことがなかったと思います。それだけ打球への反応、フィールディングがよかったですし、"ボールと親しんでいる"という感じがしたのは桑田でした。

――守備について、選手同士で話した印象的な話はありますか?

高木 大洋時代、山下さんと話したことですね。ナゴヤ球場での中日戦だったのですが、試合が終盤で大洋がピンチを迎えたんです。グラウンドもかなり荒れていましたし、山下さんに「こういう時って嫌じゃないですか?」と聞いたんですよ。そうしたら、「豊、それは運だから。イレギュラーも含めて。もっとラクに考えろ」と(笑)。こんなに楽観的に考えているんだなって思いました。だから体の力が抜けて、いい守備ができるんだなと。

――技術はもちろん、気持ちの持ちようも大事?

高木 大事でしょうね。山下さんの考えでは、「イレギュラーしたボールを捕れ」というほうが難しいし、それを自分の責任にせずにリラックスしろということ。打球に向かってスタートを切るという点でも、下半身には力を入れておかないといけないけど、逆に上体は力を抜いておかないと手が動かない。バッティングでもそうです。土台となる下半身はしっかり構え、上体はいかにリラックスさせるかが大事です。

――山下さんの話を聞いて、守備の心構えは変わりましたか?

高木 そうですね。天才の言うことはなかなか理解するのは難しかったですが、こういうことなんだろうと、上体の力を抜くように意識していました。それ以前も力は抜けていたのかもしれませんが、意識して力を抜くようになったんです。

 あと、宮本が面白いことを言っていたのですが、「エラーをするってことは、その日は運がないってこと」らしいんです。つまり名手の場合、エラーしても自分のせいじゃないんですよ(笑)。山下さんは、エラーしたらグラブを変えていましたし。「このグラブが悪いんだ」と言っていたわけではないのですが、まわりの人間からはそう見えるんです。気分転換もしたかったんでしょうね。打者も、打てなかったら違うバットを使ったりしますが、そういう感覚だったんじゃないですか。

【プロフィール】
高木豊(たかぎ・ゆたか)

1958年10月22日、山口県生まれ。1980年のドラフト3位で中央大学から横浜大洋ホエールズ(現・ 横浜DeNAベイスターズ)に入団。二塁手のスタメンを勝ち取り、加藤博一、屋鋪要とともに「スーパーカートリオ」として活躍。ベストナイン3回、盗塁王1回など、数々のタイトルを受賞した。通算打率.297、1716安打、321盗塁といった記録を残して1994年に現役を引退。2004年にはアテネ五輪に臨む日本代表の守備・走塁コーチ、DeNAのヘッドコーチを2012年から2年務めるなど指導者としても活躍。そのほか、野球解説やタレントなど幅広く活動し、2018年に開設したYouTubeチャンネルも人気を博している。

■元プロ野球選手のYouTuberのパイオニア

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